美味しいじゃないっ!
カランカランカランという、鐘のなる音で、町子は目覚めた。
なんの音?
あれ?ここは私のアパートじゃないじゃない?
ここ、どこ?
などど、しばし戸惑ったあと、ようやく、ここは異世界で、自分は王宮の客室に通されているのだということを思い出した。
「えっと……で、今のはなんの音かしら?」
と、続いてノックの音がした。隣の部屋へと続く中扉からだ。
町子は慌てて中扉に向かい、内鍵を外した。
「ちーす、マチねーさん!あれ?もしかして、寝てた?」
JKのサキだった。
「あら、よくかったわね?」
町子はサキを部屋に招き入れた、
「えっと…顔にソファの刺繍の跡が、くっきりついてるっス」
「あらやだ」
思わず顔をゴシゴシ拭う町子だった。
「いま何時かしら?もう夕飯の時間なのね?」
「まだ、15分くらい、あるっスよーーマチねーさん、あとで、三人で話し合いしませんか?」
「話し合い?そうね、夕食のあとは自由時間になるでしょうから、それはいいわね」
「アタシら、三人別々になるのだけは、避けたほうがいい気がするんっス。まあ、その話は後でするとして、エリさん、呼びましょうか?」
サキは、サキが入ってきたほうとは反対側の中扉に向かった。扉の右上に、鐘が三つついており、その下から、紐がぶら下がっている。サキはそれを引いて鐘を鳴らした。
しばらくすると、向こうからノックの音があった。
鍵は、部屋のこちら側と向こう側、両方についているようだった。
「あら、サキさん?」
目の前にいるのがこの部屋の現在の主の町子でないことに、ちょっと驚いた様子だったが、部屋の中に町子の姿を認めて、エリは合点がいったようだった。
「それにしても、ここの設備は、とても異世界とは信じられないものですね…。私たち、夕食後に、話し合いを持ったほうが良いと思いますの…」
と、エリは、開口一番に言った。
「サキさんからも、同じ提案が出ているわ…まずは、腹ごしらえして、それからにしましょう。食事の席にはカリーナさんも来るでしょうから、聞いておきたい事もあるし……」
と、町子は言った。
待つほどの時間もなく、廊下へと通じるドアにノックがあり、カリーナがワゴンを押して入って来た。
「皆様のお好みを聞くのを忘れておりました。申し訳ございません。こちらメインは鴨のローストのオレンジソースがけ、となっておりますが、よろしかったでしょうか?
「まあっ!私、ルームサービスでお食事を頂くなんて、初めてっ!」
状況も忘れて、つい声のトーンの上がる、町子だった。
広い部屋の中には、ソファとは別に、椅子とテーブルがあった。
そこに、カリーナが、次々と料理を載せていく。
美味しそうな匂いが、町子の胃を刺激した。
「まずは前菜の生ハムのサラダから、お召し上がり下さい」
と、カリーナが勧める。
「メニューの中に、鯖は、入ってないっすか?アタシあれ、アレルギーなんで…」
と、サキが言った。
「大丈夫です。鯖は今回のメニューには、入っておりません。他のお二方には、アレルギーなど、ありませんか?本当に、すみません。先にお聞きしておくべき事だったのに……」
「私はアレルギーはないけど、生の貝類は、食べられないわ」
と、エリ。
「私は、カニがダメ。ひどいアレルギー症状が出るの。あとは、なんでも食べられるわ」
と、町子。
「かしこまりました。これから、気をつけさせて頂きます。今日のメニューには、いま皆様の仰られた材料は、今回のメニューには、使われていないので、安心してお召し上がり下さいませそれからーー」
と、カリーナは続けた。
「ナイフとフォークが苦手な方には、お箸のご用意もございますので、遠慮なくお申し付けくださいまし」
いたれりつくせりであった。
とにかく、メインディッシュが冷めないうちにと、サラダに取りかかる三人であった。
「なにこれ?和風しょうゆ風味ドレッシング?!」
「んまっ!うまっ!」
「意外……美味しいわ……」
続いて出てくるコーンスープも絶品だったし、なんといっても、メインディッシュの鴨が、また美味しかったのである。
「鴨は、この脂身のもきゅーっとした感じが最高なのよね!」
「脂身って言っても、くどくないっスよ!」
「シェフの心遣いを、感じるわ……」
デザートには、フォンダンショコラが持ってこられた。
外サクフワっの、中とろっとろに、アイスクリームとホイップクリームが添えられている。
出された食事は、どれも美味しかった。
食後のコーヒーが、配られだところで、町子は、それまで気になっていたワードを口にした。
「ねぇ、カリーナさん、トイレの話なんだけどーー」




