勇者になりたい魔王と魔王になりたい勇者
俺は勇者だ。地球から飛ばされてきて突然魔王を倒せと言われて勇者となった。
不満はあったもののこの世界では職につけなさそうなのでそうするしかなかった。
そして俺は1年かけて魔王の元へ到達した。
「よくぞ来た勇者よ」
「今日魔王を倒して勇者をやめるんだ!」
「良い気概だ。気に入った。勇者よ我の味方にならないか?なるのであれば世界の半分をそなたに渡そう」
よくある魔王の誘惑だった。俺はその話をよく知っていた。
俺はなんの迷いもなく
「本当か!?世界をくれ!!!!」
「そうかそうか。ん?本当に良いのか?お主勇者だぞ?」
「良いんだ。元々俺は勇者になりたいわけじゃない。寧ろ魔王になりたかったんだ」
「じゃあなぜ勇者になったんだ⋯⋯」
「知らん、気付いたら勇者にさせられていた。元々この世界の住人でもなんでもないのになんで世界を助けなければならないんだ」
「なるほどな⋯⋯ならば私の代わりに魔王にならぬか?私は魔王なんてやりたくないんだ。人から疎まれるような立場なんて耐えられない。親から無理矢理次期魔王にさせられただけで本当は勇者みたいな立場になりたいんだ」
「本当か?ならばお互いに立場を変えよう!」
そう言って俺たちは魔王と勇者を入れ替えた。
姿に関してはお互いの姿に変身することでどうにか乗り越えた。
その後俺は憧れていた魔王になったことを喜び、魔王らしいことをすることにした。
支配している住民に税金を課し、国で企業を立ち上げ住民から数100人選んで働かせた。
俺は実際には働かず他の人々に基本的に全ての仕事をさせた。
勝手に国が豊かになり俺の生活が潤う。なんて素晴らしいんだ。
そのついでに俺は魔王を倒して来ようとする敵国を攻め落とし、支配領域をひたすらに拡大していった。
そんな傍ら、入れ替わった魔王はと言うと、熱心に勇者として働いているらしい。
魔王とは違い人からチヤホヤされるようでとても日々が楽しいらしい。
私以外の魔王に果敢に立ち向かい3人の魔王を倒していた。
私が勇者だった頃と比べても明らかに優れていた。
私は魔王が勇者になれて良かったなあと思いつつ私のところに来てしまうのかと戦々恐々としている。
そんなある日、勇者となった魔王が攻めてきた。
「勇者は嫌だ!やっぱり魔王に戻る!!!!!」
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