デート2
拙い文章ですがよろしくお願いします。
あかりと賢一は映画を観終わって一時間経った今も、その余韻に浸っていた。
二人は映画を観終わったあと、ふらふらと落ち着く場所をほぼ無意識で探し、男性一人では入りにくそうな喫茶店に入店していた。
お互いにホットコーヒーを頼み、二人の目の前には高価そうな装飾のついたコーヒーカップが置かれていた。
お互いの中身にはまだ並々とコーヒーが入っていたが、もう冷めてしまっているのに二人とも手をつける様子はない。
「すごいものを観ちゃったね」
今までボーとしていた二人だが、ついに賢一が自分の中から溢れ出すように口を開いた。
「…………」
しかしあかりは賢一の言葉に反応することはなかった。おそらくまだ自分の世界から帰ってこれないのだろう。
「おーい、あかりさーん」
賢一はあかりの目の前で手を振る。
「……え? あれ、えっと……なんでした?」
ようやく現実世界に帰ってきたあかりは今自分がどこにいるかもわからない様子で周囲を見渡す。
「映画面白かった?」
そんなことは聞くまでもなく一目瞭然なのだが、賢一は茶化すように言った。
「…………はぃ」
あかりは賢一の質問の意図がわかったのと、今まで自分が夢現つだったのを理解したのか顔が赤くなり、言葉も尻すぼむ。
「僕もさっきまであかりさんと同じように魂抜けてたから気にしなくていいよ。あかりさんの反応が面白そうだったからついね」
「もしかして賢一さんってSですか?」
「いやいや、あかりさんって表情豊かだからさ、あかりさんの色んな表情を見たいと躍起になってるのかも。無自覚だったな」
賢一は潜在的Sだとわかった。
「ところでもうとっくにお昼を回ってるんだけどお腹空いてるかな? どっかで昼食でも食べようと思うんだけど」
賢一はコーヒーカップに手をかけながらそう言った。
「私もお腹空いていたので賛成です。実はお弁当を作ってきていて……」
あかりは若干恥ずかしそうにカバンに目線を送った。
「そうなんだ! それは嬉しいよ。じゃあどうしようか? ……今日は天気も良いから公園で食べるのはどうかな?」
賢一は窓から外を見て、あかりもそれにつられるように外を見る。
「私もそれが良いです。外で食べるのなんていつ以来かな? 楽しくなってきました」
「僕は小学生以来だと思うな。僕も外であかりさんのお弁当が食べれると思うとワクワクしてきた」
店を出る前に賢一は手にとっていたコーヒーを口に含むとしかめった顔をした。あかりはそれを見て、興味本意で自分のコーヒーを口に運ぶ。
「……ぬるくなってますね」
「うん……ぬるい」
二人はこの町で一番広い公園で昼食を食べることにした。
その公園は今まで二人が休憩していた喫茶店からは遠くなく、歩いて10分といったところだ。
二人とも初めて行く公園ではないので、道に迷うことはなかった。
公園に着くと、平日の昼ということもあってか、子供の姿はなく、サラリーマンやご老人が近道として公園内を歩いているだけだった。
「大丈夫? 寒くない?」
晴れているとはいえ、九月となると気温はそうは上がらない。賢一はあかりの体調を気にかける。
「いえ、大丈夫です。私もともと体温高いのでこのくらいなら暑いくらいです」
あかりはあっけからんと賢一の心配をはねのける。
賢一は手入れの行き届いた芝の上に、公園にくる途中で買ったビニールシートを広げる。そしてシートが飛ばされないようにバックや靴を四隅に置く。
あかりも四隅に自分の荷物を置き、真ん中にお弁当が入った風呂敷を置く。
「あんまり手の込んだものじゃないですけど」
あかりはがっかりされないように一応の保険をかける。
「作ってもらえただけで満足だよ」
賢一は全く気にしてないようで、笑顔のまま、シートの上に腰を下ろす。
ああかりもそれにつられて、お弁当を挟んで反対側に腰を下ろす。
「それじゃあ……」
賢一は待ちきれないといった感じで風呂敷を外し、あかりの方を見る。
それが開けていいのアイコンタクトだったようで賢一はお弁当の蓋に手をかけた。
「いただきます!」
元気な声で今まさに蓋を開けようとした時、あかりにとって聞き慣れた声が聞こえた。
「ちょっとまった!!」
その声で蓋を開けようとしていた賢一の手が止まる。そして声を聞こえた方を見やる。
……そこにいたのは大輔だった。
お読み下さりありがとうございました。