序章
全ては、たった一つの発明によって起こった。
最初のそれは、人を傷つける目的で作られた訳ではなかった。むしろ身体障害者のために作られた補助用の機械だった。しかも量子という粒子を使って補助するという画期的な世界初の発明だった。このことにより、一時は補助機械の革命とまで言われた。それもそのはずである。従来の補助機械は脳波を読み取り動くという、時間がかかり思い通りに動くものではなかった。しかし、量子をメインの情報の通信としたため、力加減の実現、思わず[ぱっ!]と動かしてしまう。などのことが出来るようになった。本来の腕や足となんらかわりなく動くようになったのだ。そもそもこの発明、今はとなっては兵器としか呼ばれないが、最初はマルチ型身体補助装置と呼ばれていた。名前にある通りメインの基盤は同じ物でも体のいたるところに、装着することが出来た。この機械はタイプ1とタイプ2がある。タイプ1は外部からの刺激を量子に伝えてシンクロしている量子を脳波に送るというもの。例えるなら、盲目の人にこの機械を装着させると、量子が目の働きをして光を受け取り、目で見えなくても刺激を受け取れるというもの。タイプ2はタイプ1の逆で、脳波を受け取った量子が腕、足にある量子とシンクロして運動神経がうごかなくても体が動くというもの。だが画期的な発明には必ず落とし穴があるもの。イレギュラーが発生したのだ。それは共感覚者による装置の使用だ。共感覚とは一つの刺激をその他の刺激として複数受け取ること。
※詳しくはあらすじにて
なので耳からの情報が形を持ったり色をもつことなのだが、この機械を使った場合、本当に目の前にあるように見えてしまったり、視界が本当に色で染まってしまったりした。これがセカイヲ地獄に変える最初一手、ここから人間の悪知恵と憎悪の爆発が始まったのである。
俺は昔からいじめられていた。最初は普通な元気な子供として生まれて、普通の家で育てられた。しかし、小学校三年生のとき、あいつがやって来た。共感覚だ。最初は靄がかかったようにぼやけて、しかしじきにはっきりと色が「形」からとれるようになった。なってしまった。始めはよくわからなくて友達とのバカ話の一つとして取り入れた。しかしそこでとあるミスをしてしまったのだ。会話の中、その人を見て思い浮かぶ色を言っていた。それを学校の不良が聞きつけて、自分の色は何色か聞いてきた。思わず怖くて、考えなしに見えた色を咄嗟に答えた。
「えっ、えっと…グレー!」
言った後に気がついた。自分がなんと言ったかを。そこからだった。生徒、先生、地域のひとまで。揃ってみんなおれのことをいじめ始めた。何故だ!あのときは間違いなくネズミ色だったんだ。きかれたから答えた。見えた色が性格を表すわけじゃない。不良に対してグレーゾーンだ、なんだ、なんて言ってるつもりじゃなかった。しかし不良はぶちギレ、その噂は凄い速さで学校中に広まって行った。あれ以来、俺は引きこもるようになっ。カウンセリングのために、外に出れば下級生から石を投げられることもあった。それが頭に当たり、半身付随になった。病院の手術で新しくできたというマルチ型身体補助装置を装着させられた。もう家から出る気もないが、何かしらどうこうでつけなくてはいけないらしい。正直、もうどうでもいい話だ。半身付随なのでタイプ1 タイプ2、両方つけられた。そして親の判断で引っ越すことになった。引っ越しの前、先公が一回学校に来い、というのでいきたくなかったが、手続きがあるのこうので行くしかなかった。1日だけの辛抱だと思い、仕方なく学校へ、案の定学校では全員が俺をさけて通り、あざ笑う声が脳に響き渡る。自然と体に力が入るきがした。「おい!」後ろから声がかかる。あの不良だ。耳からのです情報は音と他の刺激としておくられ、怒りの感情が膨れ上がる。脳から本来足だけを動かす情報は腕にも伝わり、まるでただふりむくかのように、ウデガヨコナギヲシテイタ。自分の右側にいた人間が人間だったものに一瞬で変わった。怒りの感情が力になったようだ。そして俺はこの力により俺の脳はこれだけをこれだけを考えるようになった。
「復讐だ…」
世界はこうして地獄へと変わったのである。