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「しまった★!」

作者: 夢@フクロウ

 しまった!消しちまった!まただ。これで3回目。たぶん4回目もあるに違いない。


何を消したかったって?自分の頭の中。いや、冗談ではなくて。俺はロボット。最新型ではないけれど、3年前に設計・製造された。この時代、3分前が昔と言われるぐらいだから、3年前なんて大昔と同じで化石でしか表現できないくらい。と思われてしまう。


それで俺の場合、起動シーケンスが動き出すときにフラッシュメモリの容量が足りないので、初期化が必要。そんなに重要ではないちょっとした動作なんかをメモっておいて再現時間を短縮するためのデータなんだけれど、たまに消すものを間違えるんだよね。その手順自体、消してんじゃないかなと思うときもあるけれど。それで、今回消したのは、・・・えっと、あれはある、これはそれ、それから・・・こりゃ大変だ!だれがご主人様なのかを消しちまった。なんでそんなデータ消せるところに入っているんだよ?っていわれそうだけど、さっきも言ったとおり、俺古いロボットだからメモっておくところがあまりなくて、とりあえずって退避してるんだよね。後で戻そうと思ってさ。


 それはそれとして困ったね。経緯はこうさ。ちょっと買い物頼まれたんで町に来たんだよね。そしたら、すっかり様子が変わっていたんだよね。いやー、だから嬉しくなっちゃって(ロボットには感情ないだろうって野暮なつっこみはなしだぜぃ)、暫くぶりだから、頼まれた買い物済ましてから町ブラしてたら、


 「ちょっとそこのお兄さん。寄っといで」


だなんて、誘う女がいるじゃねーか。あ、俺ロボットだけど見た目人間の男と変わりないんでよくまちがわれるんだよね。(もちろん、イ・ケ・メ・ン)だから言ってやったんだよ


 「あ、俺、ロボット」


たいていならこう返すと、


 「おっと、ブリキ野郎にゃ用はないぜ」


っておきまりのセリフ言わて、


 「おっと、あんたそりゃ違うね。おりゃ、ブリキなんて安いもん使ってねーぜ。鋼亜鉛メタルの純度99.99パーセントの5ミリ。何されたってびくともしないぜ。覚えておきやがれ!」


とまあ、やり返すだわ。そしたらその女、こともあろうに


 「じゃあ、試してあげるわ」


と言ったとたん、ショベルカーを引っ張り出してきて追いかけてきたんだ。だからすたこらさっさーと逃げましたよ。ほんと。え?何で逃げたかって?だってショベル当たったらやばいでしょう。壊れますよ。だって、ハッタリで言ってんのに、まじ受けされるなんて思ってないし、それに、なんで持ってるの?そんな重機械。(護身用ですか?知らんけど)とにかく、もうダッシュしてタマ避けながら突っ走って、気がつくと、なんだか森の中。ここはどこ?ってなわけで三百六十度全方位型サーチシステム起動させて(まあ、早い話が、両手で地図を見ながらってっこと)帰り道探していたら、今度は足滑らして谷底へまっしぐら!次の瞬間、強い衝撃どっかーーんで、目の前真っ暗。緊急全システム自動チェックシーケンスの開始ときたもんだ。幸か不幸か、チェックサムには問題がなかったのでさっきの通り起動シーケンス開始となったって訳。まあ、こんなときに備えて一応は対策プログラムが組み込まれているんだけども。次の三つがそうだ。


 一つめ。「アラシの中をイケイケ伝書鳩」モード。


 二つめ。「わんわんご主人さまを探してハチ公」モード。


そして、三つめ。「酔っ払い自動帰宅」モード。


 一つめの「アラシの中をイケイケ伝書鳩」モードは、伝書鳩の帰省本能を利用して、巣箱がある場所までついでに物を運ばせるモードのこと。さて、このモードスイッチをオンにしてと・・・俺もエネルギー補充装置がある場所まで帰省本能で・・・・あれ?あれれ?『帰省本能』がインストールされてないじゃないか!全然帰りたくなんないぞー。それよりもあれれれれー、なんだか首が前後にピコピコと勝手に動くー!!助けてー。首がもげるーーーーーーー。あーーーーー・・・・・・・・・・・・・!


 ふー。気を取り直して、二つめ。「わんわんご主人さまを探してハチ公」モード。モードスイッチオン。これさえ使えばきっと。なんたって日本人なら知らないものはいないと言われる最強モード。ご主人さまの送り、迎えをご主人がいなくなっても続けて・・・・あれ?いなくなっても?待つ?ちょっと待て。じゃなくて、「待つだけ」じゃん。くっそー、どうりでスイッチ入れてから体が重たくて動きやしねー。これってもしや、ご主人が現れないと解除できねーってことじゃないだろうなー。うっそー。かんべんしてよー。あれー。動けーーーーーー・・・・・・・!


 はー。無駄にエネルギー使うってのは疲れる。(だからロボットは疲れないだろうってツッコミはなしだぜぃ)こんなときのためにセットアップしたモード二つともだめじゃん。あと一つしか残ってないし。だんだん不安になってきた。これでまた駄目だったらアウトだよ、ア・ウ・ト。スリーストライクで野球もアウトでしょ!まあいいや。もう一度気を取り直してっと。なんだっけ、えっと、「酔っ払い自動帰宅」のスイッチオン。・・・・・・・【若干時が経過】・・・・・・・・なにも起きないぞ。これもだめなのかー。まさか本当に酒飲まなきゃだめだとかじゃないだろうな。それだとわざわざ、こんなモードいらないだろー。えっと、マニュアル、オンラインマニュアルっと。何々?『スイッチ入れただけじゃ動きません』ってなんだ?さらに何か説明があるぞ。『右腕をまっすぐ前に地面と水平に伸ばしてそれから、右手の人差し指と親指をくっつける』・・・・なんでこんなことやるんだ?どれどれ。あ、足がかってにまわれ右して、動きだしたー。すげー。これってきっとご主人さまの所へ戻るんだ。でも・・・・・じぐざくに進むのはなぜ?酔っ払いだから?ま、いいや。それ!ご主人さまの所へGO!


 ピンポン。玄関の呼び鈴を押すと同時に俺のメインメモリへご主人さまデータを書き込みなおす。カリカリカリカリカリ・・・ライト完了!やっともどった。にしても、ずっと水平にしてた腕と指にはなの意味があったんだ?もう一度オンラインマニュアルっと。お、説明あるじゃん。『このモードの酔っ払いはお土産を持ち帰るバージョンです』なに?もしかして、この動作はお土産ぶら下げてた?・・・・ふざけるなーーーー!!!

さて、ご主人に頼まれた、買い物でもしてくるかっと。アー忙しい、忙しい・・・・・・


 オンラインマニュアルにはこうも書かれていた。

『尚、人間が酔っ払う場合によくみかける短い記憶喪失も忠実に再現されます』


おわり。

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