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第二話 ソロモンの栄光と愛の言葉


 シュラムの娘の休憩が終わり、また別の日に白の中に連れて来られました。シュラムの娘は不思議キャラを演じ乗り切ることにしました。


「おはようございます。私は不思議な夢を見ました。それを皆さんに聞いてもらいたいのです。どうぞ聞いてください」


(もう病気キャラでも、不思議キャラでもいいわ。とにかく逃げ出したい……)


「私は夜、寝床で、私の魂の愛している方を捜しました。


私はあの方を捜しましたが、見い出せませんでした。どうか、私を立たせて市の中を行き巡らせて下さい。私の魂の愛している方を、ちまたや公共広場の中で捜させてください。


市の中を行き巡っていた見張りの者達が私を見付けました。私の魂の愛している人をあなた方は見ませんでしたか?」


(私に釣り合う人なんているのかしら? この市内にいるはずないけどね?)



 「彼らから離れると間もなく、私は私の魂の愛している方を見付けました。私は彼を捕らえて離そうとはしませんでした。そして、私の母の家に、私を身ごもった母の奥の部屋にあの方を連れて来ました」


(私をさっさと解放しなさいよ。そうしたら、私も愛する人が見付かるはずなんだから♡)



 「エルサレムの娘達よ、私はあなた方に雌のガゼルや野の雌鹿以上に誓いを立てさせました。愛がその気になるまでは、私の内のそれを目覚めさせたり、呼び起こしたりしないと」


(ソロモン王なんて、金があるだけじゃない。私は一人だけを愛する夫が欲しいの!)



 シュラムの娘の話を聞き、王妃達は騒ぎ出した。王妃達は長期戦を避けるため、一気に畳み込もうとする。王妃達はソロモンの煙の柱をシュラムの娘に見せる。


「没薬や乳香、いえ、貿易商のあらゆる種類の香粉でにおっている、煙の柱ように荒野から上って来るこのものは何でしょう」


(うわー、臭いきっつ! 炊き過ぎなんだよ……。少しでいいんだよ、こんなんは……)


王妃達はシュラムの娘にソロモン王の寝椅子を見せる。


「ご覧なさい、それは王の寝椅子、ソロモン王のものです。イスラエルの力ある者の中から六十人の力ある者がその周りにいます。みな剣を持ち、戦いを教えられた者達で、各々夜の怖れのために剣を股に帯びています」


(こんなに多くちゃ、気になって寝れないっーの。アホか! 


演出し過ぎなんだよ。少しは娘の気持ちも理解してやれや! そりゃあ、夜は危険かもしれないけど、これは多すぎだろ。逆に不安になってくるわ!)



 王妃達はソロモンのつり台をシュラムの娘に見せてきた。


「それはソロモン王が自分のためにレバノンの木から作ったつり台です。王はその柱を銀で、その支えを金で作りました。その座は赤紫に染めた羊毛で出来ており、その内側はエルサレムの娘達が愛を込めて取り付けた物です」


(うう、内職が大変だったわ……。中腰で作業して腰が痛くなったわよ!)



 そして、王妃達はシュラムの娘にソロモン王を見せる。


「シオンの娘達よ、出て、花冠を付けたソロモン王を見なさい。それは王の結婚の日、その心の歓びの日に、王のためにその母が編まれた物です」


(母親のバテ・シバも本当は夫がいたんだっけ。ところが、戦争の最前列に行かされてうまい具合に亡くなったのよね……。ダビデ王は妻も多かったけど、ソロモン王も父親に似たのかしら。将来が心配になって来るわ……。


良い妻がいれば良いのだろうけど……。あ、そのエロ王が何か言うわ……)



 「ご覧、私の友よ、あなたは美しい。ご覧、あなたは美しい。あなたの目はベールの後ろにあって、ハトの目のように慈愛に満ちている。あなたの髪はギレアデの山地からはねて下ったヤギの群れのように美しい。


あなたの歯は洗い場から上って来た毛を刈ったばかりの雌羊の群れのように白い。みな双子を産み、その中のどれも若子を失ったことが無いように並んでいる。あなたの唇は緋の糸のようだ。


そして、あなたの話し方は快い。あなたのベールの後ろにあるあなたのこめかみは、ザクロの片割れのようだ」


ソロモン王の話が長いので、王妃達は余計な事を考え始めた。


(さすがはエロ王ね……。女性を褒める言葉が淀みなく流れてくるわ……。まだ続くのかしら?)


ソロモン王の語りはまだまだ続いた。


 「あなたの首はダビデの塔のようだ。それは石の行路に建てられており、その上には千の盾、力ある者達のすべての円盾が掛けてある。あなたの二つの乳房は、ユリの花の間で草を食べている二頭の若子、雌のガゼルの産んだ双子のように豊かに育っている」



 ソロモン王は熱心に語るが、シュラムの娘には逆効果だった。


(帰りたい……。ソロモン王はうざい……)


しかし、ソロモン王は自分の言葉に酔っており、更に褒め言葉を語り出していた。


「日がいぶき、影が去ってしまうまで、私は没薬の山に、乳香の丘に進んで行きます。私の友よ、あなたは全く美しい。あなたには欠けた所が無い。


花嫁よ、レバノンから私と一緒に、レバノンから私と一緒に来るように。アンティ・レバノンの頂から、セニルすなわちヘルモンの頂から、ライオンの巣穴から、豹の山から下りて来るように」


(ライオンの巣穴、豹の山って、私しゃ、もののけ姫かよ! そこまで田舎者じゃないわ!)



 ソロモン王は自分の言葉に酔い、シュラムの娘をじっと見つめる。


「私の妹よ、私の花嫁よ、あなたは私の心を躍らせた。あなたはあなたの目一つによって、あなたの首飾りの下げ飾り一つによって私の心を躍らせた」


(あーん? こんな首飾り、あんたに返してやるわよ!)



 ソロモン王はシュラムの娘を真近に見て、暴走し始めた。


「私の妹よ、私の花嫁よ、あなたの愛情の表現はなんと美しいのだろう。あなたの愛情の表現はぶどう酒よりもあなたの油の香はどんな種類の香物よりもはるかに優れている」


(言ってねーし。何、脳内変換されてるとかかしら? もう、何を言えば分かってくれるのかしら? あんたに興味はないって!)



 ソロモン王はシュラムの娘の匂いを嗅ぎ始めた。


「私の花嫁よ、あなたの唇は蜜蜂の巣の蜜を持って滴り続ける。蜜と乳があなたの舌の裏にあり、あなたの衣の香はレバノンの香のようだ。


私の妹、私の花嫁は横木で閉じられた園。横木で閉じられた園、封じられた泉。あなたの肌はザクロの庭園。そこには選り抜きの果物、ヘンナの木、それに香料の木がある。香料とサフラン、籐と肉桂、それにあらゆる種類の乳香の木、没薬とじん香、更にすべての最良の香物がある。


そして、園の泉、新鮮な水を出す井戸、またレバノンから滴り出る流れ。北風よ、目覚めよ。南風よ、入れ。私の園の上に息を吹きかけよ。その香物を漂わせよ」


ソロモン王はようやく長い褒め言葉を終えた。


(ふー、水が一杯欲しいぜ! シュラムの娘も俺様の魅力にメロメロだな!)


シュラムの娘は遠回しにソロモン王を振ることにした。そっけない態度で語る。


「私の愛する方が自分の園に入って来て、その選り抜きの実を食べますように」


(表現がなんか嫌……。ああ、早く帰りたい)



 ソロモン王は僕達に命令し、宴会を催しました。


「私の妹、私の花嫁よ、私は私の園に入って来た。私は私の没薬を私の香料と共に摘んだ。私は私の蜜蜂の巣を私の蜜と共に食べ、私のぶどう酒を私の乳と共に飲んだ」


(ちっ、シュラムの娘は態度がそっけないようだな。この手はできれば使いたくなかったが仕方ない。豪勢なパーティをして盛り上げ、シュラムの娘が酔った勢いに乗じて結婚してしまおう。


律法では、結婚していない男女が床を共にした場合、不倫関係なら死刑だが、独身の娘なら両親に金を渡せば結婚が成立するからな。本来は、俺様の魅力で落としたかったが、この際は仕方あるまい……)


「友らよ、食べなさい! 飲んで、愛情の表現に酔いなさい!」



 ソロモン王は豪華なパーティを計画し、王妃とシュラムの娘、エキストラの花嫁候補を食事に招きました。


(くっ、次は豪勢な食事と楽しい雰囲気で釣り、一気に既成事実まで持って行く気か? 


責任を取るという口実で、結婚する気ね! 


金持ちの考えることなんてみんな一緒ね……。


お酒を飲んで眠ったりしたらアウトだわ!)


シュラムの娘は極力お酒を飲まないようにしていた。豪勢な食事とぶどう酒により、王妃やエキストラの花嫁候補達はしだいに眠りに落ちて行った。シュラムの娘が眠らないので、雇われていた王妃が近付いて来る。


「シュラムの娘はまだ眠くないのですか? 

他の娘達は眠りについたというのに……。ソロモン王様があなたを心配しておいでです」


(早く眠れよ、この小娘が! 私の仕事が増えるだろうが! エロ王の世話でこっちは忙しいんだからな!)


シュラムの娘は機会を窺がって、逃げることにした。


「私は眠っていますが、心は目覚めています。

私の愛する方が戸を叩く音がします!」


(今なら人手が少ないわ。逃げるチャンスだわ! 山育ちをなめるんじゃないわよ!)


「あの方がこう言っています。私の妹、私の友、私のハト、とがめのない者よ、私のために開けておくれ。私の頭は露で濡れ、私の髪の毛は夜の滴で濡れてしまったのだからと言っています」



 シュラムの娘はゆっくりと扉に近づき語り出した。


「私は長い衣を脱いでしまいました。どうしてまた着られるでしょう。私は足を洗ってしまいました。どうして汚せましょう」


シュラムの娘はそう言いつつ、上着を取り、扉を開けた。次の瞬間、シュラムの娘はガゼルのように走り出した。しばらく見続けていたソロモン王でしたが、シュラムの娘が逃げたことを察知して叫び声を上げた。


「シュラムの娘が逃げた! 捕まえろ! ただし、傷を付けてはいけない。男達が総出で捕まえるんだ! 手引きするような男がいたら殺してかまわん! いそげ!」


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