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彼女についてわかったこと。

2話目投稿です。

こちらも観ていただきありがとうございます!

──翌日


「…名前」


「ん、名前?」


こくん、と彼女は頷いた。


「…聞いてなかった、から」


彼女は無表情な目を向けたまま言う。

僕は乾いた笑顔のまま、あぐらを正座に直して話し始めた。


「そうだね、自己紹介から始めようか。僕の名前は──」


* * *


「あ、ああああああっっっっっ!!!!」

ジャラジャラジャラ!!


「落ち着け! 落ち着けって時雨!」


少女の首を半端に戒める、鎖の首輪が鳴り響く。


僕の目の前では、管理すべき少女が頭を抱えながら苦悶の表情で激しく床を転がっていた。


「嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だああぁぁぁぁ!!!」


「くそっ、このままじゃ首しまるぞ!?」


怪我をさせるなと命令を受けている以上、本人が勝手に死ぬのだって僕の責任になる。

だから一人で暴れて首がしまるのだって許されない。


仕方がないから体全体で時雨を押さえる。彼女は小柄なので暴れていてもすぐ動きは抑えられた。


「…っうがああ!」


「ぐっ」


唸り始めた彼女はいきなり僕の腕に噛みついた。

もう僕の腕には彼女の噛み傷が10はある。

預かってから3日。初日の夜が特に不安定だったのだ。


いや、でも舌を噛まれるよりはマシだし、このまま鼻も押さえていったん意識を失わせよう。


「…っあ…」


「ふぅ。やっと落ち着いたか」



今は3日目の夕方。


時雨を預かっていて分かったことが3つある。


その1。精神的に不安定になって暴れるのは、夕方から夜にかけての2時間と深夜から朝にかけての2時間の2回。


その2。食べ物に頓着しない。

好き嫌いはなきどころか、僕が口をつけたものをそのまま食べたがるし、調味料をそのまま飲もうとしたり口に入れようとする変なところはある。

とりあえず胃袋になにか入ればいいようだ。


その3。昼間は基本的に床で寝ている。

手足を丸め、寝息もほとんどたてずに寝ているので、昨日大学から帰ってきたときは死んでいるのかと思って慌てたものだ。


今のところ、この3つが彼女に関してわかったことだ。



「なあ時雨、僕は今日オムライスにするけど、君はなにか食べたいものある?」


「…同じの」


「オムライスね、わかった」


会話を終えると僕は手早く大きめのオムライスを一つ作る。


先ほど食べ物に頓着しないといったが、時雨の言う「同じの」とは「種類の同じオムライス」ではない。


「僕が食べるオムライス」のことを指すのだ。なぜだか彼女は「自分の分」という概念がないらしい。


同じメニューを男女二人で突っつくのに、カップル的なドキドキがないのはなんでだろう…悲しくなってきた。


「どうオムライスおいしい?」


「…」


感想が無言って…不味いのか!?


「…おいし、ぃ」


ならよかった。


「どうして時雨は人と同じものを食べるの?」


つい聞いてみた。この3日間でやっとまともに会話できるようになった。


「…」


それでもまともに返答が返ってこないこともあるけど。


「あとさ、その首輪そろそろ取っちゃわない?」


危ないしね。


「嫌だ…」


「え?」


「…」


ジャラジャラジャラ…。


時雨はそのまま黙々とオムライスを食べ続け、それきり喋らなくなってしまった。


どうしよう、また会話が繋がらなくなってしまった。

あとコイツ、オムライス僕の分を残すつもりなさそうだ。

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