入学、入部、そしてライバル 2
「あれ、見学の子?」
入ってきたのは綺麗な女の子。ネームの「夏川」の文字。純平くんをみると、驚いたような、うっとりしたような不思議な表情をしていた。1つ分かったことは、なにか特別な感情がこの一瞬で純平くんの心に創られたこと。
「私、美術部三年の夏川蒼。2人とも入部希望とかあるの?」
夏川さんは澄んた綺麗な声で言った。
「あの、俺たち2人とも入部しようと思ってます。俺は大城純平っていいます。」
純平くんが入部届けを見せながら言った。
「私は磯辺海咲です。」
私もあわててお辞儀した。
「よろしくね!早速なんだけど、明日から出てこれるかな?来月あるコンクールに出品する絵があと3つ必要なの。難しいと思うけど、頑張ってくれるかな?」
「「はい!」」
明日から絵が描けるなんて思ってもみなかった。
「とりあえず、今日は部活ないから、帰って、明日画材持ってきてね。」
私たちは入部届けを出して廊下に出た。
「夏川さん、すごく綺麗な人だね、優しいし。」
「うん、流石あの絵を描いた人だな。」
帰り道、純平くんは珍しく黙っていた。眉間にシワをよせ、唇に指を添える。こういう顔をしているときは、絵について考えているときだ。この時は周りに意識が向かないので、私が見ておかないと、この前は車にひかれそうになった。
今日も赤信号に気づかず、横断歩道を渡ろうとした純平くんの袖を引っ張って止める。もちろん青信号にも気づかないから、渡るときも腕を引っ張る。無事家に送り届けて自分も家に向かう。これはもう日課になっていた。私しか知らない純平くん。
『私がいないとだめなんだから。』
少しほっこりして、家に帰った。