狼と友達
独りぼっちの少女が居ました。
赤毛の少女はいつも独りぼっち。
とてもとても友達が欲しかった赤毛の少女でしたが、友達の作り方を知りません。分かりません。
赤毛の少女は、いつも沢山の友達に囲まれているジョニーの事が、羨ましくてたまりませんでした。
「どうすれば私にも、あんなに沢山の友達が出来るのかしら?」
赤毛の少女は悩みました。
そしてある日、いい事を思いついたのです。
「そうだわ!ジョニーは沢山友達が居るから、ジョニーと仲良くなればいいのよ!」
しかし、赤毛の少女はどうやったらジョニーと仲良くなれるのかが、分かりませんでした。
どうやって声をかけたらいいのか。
どうやったら仲良くなれるのか。
ある日赤毛の少女は、ジョニーの友達が彼の話をしている事を耳にしました。
「ジョニーは甘いお菓子が好きだから、今度皆で作って持って行ってあげよう。」
赤毛の少女は思いました。
「ジョニーは甘いお菓子が好き・・・。そうだわ!!沢山お菓子を作って、家に招待をすればいいのよ!」
いい事を思いついたと、赤毛の少女は早速沢山の甘いお菓子を作りました。
そして勇気を振り絞って、ジョニーが一人で居る時に、ジョニーに話しかけます。
「ねぇジョニー。今家に沢山の甘いお菓子があるのだけれども、食べに来ない。」
「本当に!?是非行かせてもらうよ!」
ジョニーは嬉しそうに、赤毛の少女の招待を受ける事にしました。赤毛の少女もジョニーが家に来てくれる事になり、とても嬉しそうです。
早速ジョニーは赤毛の少女の家へと行くと、そこには赤毛の少女言う通り、沢山の甘いお菓子がテーブルの上に沢山置いてありました。
「さぁどうぞ。好きなだけ食べていいわよ。」
赤毛の少女にそう言われると、ジョニーは早速沢山のお菓子を頬張り始めます。
「君はとても優しいんだね。名前は何て言うの?歳はいくつ?昔からこの辺りに住んでるの?」
ジョニーはお菓子を食べながら、嬉しそうに赤毛の少女に沢山の質問をしました。
赤毛の少女はそれが嬉しくてたまりませんでした。
赤毛の少女とジョニーは、沢山の事を話しました。
あぁ・・・このままずっと時間が止まってくれればいいのに・・・。そう思う程に、楽しい時間が過ぎていきます。
初めて友達が出来た赤毛の少女は、ずっとジョニーと一緒に居たいと願いました。
しかし、日が落ち外が薄暗くなってくると、ジョニーはそろそろ帰らないといけないと言い出します。
「どうして?もっとここに居ればいいわ。お菓子もまだこんなに沢山ある。」
赤毛の少女は必死にジョニーを呼び止めました。
しかし、ジョニーは帰らないと皆が心配するからと、赤毛の少女にお礼を言い、帰ろうとしました。
赤毛の少女はとても焦りました。
どうしよう・・・せっかく友達が出来たのに、帰ってしまう。明日はもう来ないかもしれない。このまま帰してしまってはダメ!せっかく出来た友達!!ずっと一緒に居るの!!!
赤毛の少女は、家の中にあった斧を手に取り、帰ろうと背を向けているジョニーに向けて、思い切り振り下ろしました。
斧はジョニーの背中に刺さり、ジョニーは悲鳴を上げます。
それでも赤毛の少女は、何度も何度もジョニーの背中に斧を振りかざしました。
沢山の血しぶきが舞います。
気付けば家の中は、ジョニーの血で溢れ返っていました。
滴り落ちる斧からは、ジョニーの血。
床に横たわる血だらけのジョニー。
赤毛の少女は、ジョニーを殺してしまいました。
しかし、赤毛の少女は被虐的になる事はありませんでした。
「なんだ、最初からこうすればよかったのね。こうすれば、ずっと家に居てくれる。」
赤毛の少女は、ジョニーの死体を持ち上げ、椅子に座らせました。
次の日、昨日からジョニーの姿が見えないので、他の者達は心配して、ジョニーを探していました。
そんな大勢の中でも、エミリーは特に心配そうに必死で探します。エミリーはジョニーの一番の友達だったからです。
その事を知っていた赤毛の少女は、そっとエミリーに近づきました。
「ねぇエミリー。ジョニーなら家にいるわよ。」
「え?本当に?」
赤毛の少女の言葉に、エミリーは驚きと共に、ほっと胸を撫で下ろしました。
「よかった・・・。狼にでも食べられたかと思ったわ。」
安心をするエミリーに、赤毛の少女はは可笑しそうに笑いながら言いました。
「あら、食べているのはジョニーの方よ。昨日からずっと、家で甘いお菓子を食べているわ。そうだわ!エミリーも家へいらっしゃいな。そしたらジョニーにも会えるわ!!」
赤毛の少女の言葉に、エミリーは頷くと、言われるがまま、赤毛の少女の後をついていきました。
家へとつくと、エミリーは早速中へと入ります。
「ジョニー、皆が心配をしているわよ。」
しかし、ジョニーの返事はありません。
赤毛の少女は、家のドアを閉めると、また斧でエミリーに襲い掛かりました。
エミリーの体に、何度も何度も斧を振り下ろします。
血だらけのエミリー。
恐ろしさの余り悲鳴も出ずに、無言で血ぶくを吐きます。
また家の中は、今度はエミリーの血の海になってしまいました。
「あぁ・・・また掃除をしなくちゃ・・・。」
赤毛の少女は、死んだエミリーの体を、椅子へと座らせました。
今度はエミリーの行方が分からなくなり、他の者達はまた必死で探します。
その中でも、エミリーと仲の良かったジェニファーは、とても心配そうに探していました。
今度の獲物は、ジェニファーに決まりです。
「ジェニファー。エミリーなら、怪我をして私の家で休んでいるわ。」
「え?狼にでも襲われたの?」
「そうよ。」
そう言って、赤毛の少女はジェニファーを家へと誘い込みました。
ジェニファーの死体を椅子へと座らせると、家の中が賑やかになりました。
死体が三つ。
でもまだ外には、沢山の友達候補が居ます。
まだまだ、家の中は賑やかになります。
大勢の友達に囲まれ、この家の中に居る事を想像すると、赤毛の少女は嬉しくてたまりませんでした。
赤毛の少女は、次の日も、また次の日も一人、また一人と家へと誘い込みます。そして殺し、椅子へと座らせていきました。
テーブルの上には沢山のお菓子。
テーブルの周りには沢山の友達。
赤毛の少女は、嬉しくて仕方ありません。
真っ赤にこびり付いた床の血の痕。
悪臭を放つ家の中。
そんな事は、気にもなりませんでした。
今家には沢山の友達が遊びに来ている、それだけで満足だったのです。
「さぁ皆、新しいお菓子が焼けたわよ。」
赤毛の少女は嬉しそうに出来立てのお菓子を、テーブルの上へと運びました。
しかし、誰も食べようとはしません。
「どうしたの?皆食べないの?」
しかし、誰も答えようとはしません。
あぁ・・・皆死んでいるからか・・・。
赤毛の少女は、初めてジョニーが家に来た事を思い出しました。
沢山質問をして来てくれて、沢山お菓子を食べながら色々な話をしました。
しかし、死人に口なし。
死んでしまえば、一緒には居られても、話す事は出来ないのだと、赤毛の少女は気付きます。
「退屈だわ・・・。」
赤毛の少女は、また独りぼっちの頃を思い出し、寂しく感じました。
今思えば、誰一人として、赤毛の少女の事を知っている人は居ませんでした。あのジョニーでさえも。
赤毛の少女の存在は、最初から誰にも気づかれていなかった。
こうして沢山の子供達が行方不明になっているにも関わらず、誰一人赤毛の少女の家を訪ねて来ない。
「私は最初から最後まで居ない存在なのね・・・。」
その事に気付いた赤毛の少女は、急に悲しみに襲われ、大粒の涙を零しました。
「あぁ・・・狼は私だったのね・・・。」
赤毛の少女は、このまま永遠に皆と一緒に居られる方法を考えます。
「そうだわ!私も死ねば、皆のところに行ける!!ずっと一緒に居られる!!!」
赤毛の少女は、家の中に火を放ちました。
火はあっという間に大きくなり、皆の死体と赤毛の少女の体を、燃やし尽くします。
家が火に囲まれ、全ての物が燃えて無くなる時、何一つ残っている物はありませんでした。
赤毛の少女の死体さえも・・・。
独りぼっちだった赤毛の少女。
友達の作り方を知らなかった赤毛の少女。
彼女は狼になり、最後は寂しさから自らの命を絶ちました。
それでも誰にも気づかれない、哀れな少女