驚き
夕食を終えて、冬哉兄さんと別れ、自室に戻った。
今日の課題をやりだした。
暫くすると、コンコンとドアをノックする音。
「はい」
ドアを開けて顔を出すと神妙な顔をした成瀬が立っていた。
「成瀬…。どうかしたのか?」
冬哉兄さんに距離を取れって言われたばかりだからか、警戒心が出る。
「ちょっと…いいか?」
成瀬が部屋に入れろと言うように指を指す。
「あっ……。ここじゃ、ダメなのか?」
「何?そんなに警戒しなくてもいいだろ。それとも入られたら困る“物”でもあるのか?」
う……。
そんな物はないけど……。
真顔でいわれたら、入れるしかない。
私は、渋々ながら部屋に入れた。
「しかし、飾りっ気の無い部屋だな」
奴は、部屋を見渡しながらそう言う。
「普通じゃないの?」
「“ないの?”お前、変なところで女ぽいよな」
って、怪訝そうな顔をで言う。
やば、ばれた……。
まさか、バレたのか?
それは、確かにヤバい…のか……。
って、動揺しすぎか?
元々、女だし…な。
言葉使いも気を付けなければ……。
「そ…そっか?で、用件は?」
私は、目線を泳がしながら、話を逸らした。
「…ん?さっき、高津先輩と楽しそうに話してるのを見て、ちょっとな」
なんだか、複雑そうな顔。
それが、どうしたと言うのだろうか?
私にとっては、何時もの事だ。
「あのさ…」
言いにくそうに切り出す。
「もしも…もしもの話だけど……。お前が女なら、高津先輩に憧れとか抱いたりするのかなぁっと思ったりして……。アハハ……」
真顔で言って、乾いた笑いが聞こえてきた。
一体、何が言いたいんだ?
まぁ、確かに冬哉兄さんは、憧れでもある。
「悪い…。今の忘れてくれ…」
戸惑いながら、成瀬が言う。
「忘れていいのか?なら、もう忘れた」
私が無情に言うと。
「お…お前、いくらなんでも早すぎ…」
成瀬が苦虫を噛んでる。
なんか、難しい顔をしてるが……。
「要らん情報を何時までもってるのもな。だから直ぐに忘れるようにしてる」
私は、特に気にも止めず、そう告げた。
「少しは、気にして欲しいんだが…」
成瀬の呟きが聞こえてきた。
何が言いたいんだ?
「一体どうしたん…」
私の言葉を遮るように成瀬が口付けてきた。
私は、成瀬を突き飛ばした。
な…何が……?
プチパニック状態。
「な…、何してるんだよ!」
私のファーストキス……。
不覚にも、コイツに奪われるなんて……。
ましてや、見た目が男の私に……。
コイツ、男好きなのか?
生憎私は、男ではないが…。
私の頭の中で、グルグルとその事ばかりが巡る。
「仕方ないだろ。俺、お前の事が好きになっちまったんだから……」
成瀬が顔を赤くして、体勢を整える。
エッエーーーーーーー!!
何が、どうしてそうなるんだ。
たった一ヶ月の同じクラスメートとして生活を共にしたからって、色恋になるなんて、変だよ。
私は、人と関わるの好きじゃないし、コイツのこと、何も知らないし知りたいとは思わないんだが…。
「返事は聞かない。ただ、俺が想ってるだけで、お前からの見返りが欲しいとは、思ってないから……。伝えたかっただけだから…」
成瀬は、赤らめた顔のまま真面目に言いはなっつと部屋を飛び出していった。