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自分の意思



「家に戻った日、お祖父様が初めて私に謝ったの。でも、それはもう一度男としてあの学園に戻る事と家の為の威厳だけだった。私は、そんなお祖父様に楯突いた。 "私は、お祖父様の人形じゃありません。男に戻る気なんてありません" って、初めて自分の意思を伝えたの。そしたら、お祖父様カンカンに怒って、そのまま私は反省室行きになった。私は、最初から覚悟してたし、別になんとも思わなかったんだけど……。」

私の言葉に。

「幸矢。ごめん……。」

目に涙を滲ませる母の声。

私は、首を横に振り。

「気にしないで。……それからお祖父様との根比べが始まったの。でも、私はこの通り負けてしまったわけで……、だから、お祖父様の言うことを聞かないといけない。ならば、あのまま自分の意思を持ったまま死んだ方が良かったって思う。」

二度と男になりたいと思わなかったのに……。

「ちょっと待て。飲食は摂ってたんだろ?」

成瀬くんの言葉に私は首を横に振る。

「飲食無しってことか?」

私は縦に首を振り。

「反省室に入ると、飲食は与えられない。入った者が反省し、謝るまで絶対に出して貰えない。」

成瀬くんから目線を外して口にする。

「幸矢、もしかして……。」

母さんが察してくれた。

「そうだよ。自分が自分で在る為にもずっと抵抗したよ。その中に居ながら、暇で体を動かして自爆したって言った方が良いのかな。そうなったらそうなったで、別に構わないかって思ったんだ。」

今まで自分の意思をはっきり言わなかった(言えなかった)。

やっと言えたんだから、無理してでも通そうとするでしょ。

「幸矢、あなたなんて事を……。あの部屋は、夏場は日差しが強くてただでさえ脱水症状を起こしやすい部屋だって分かっててやったのでしょ。何故そこまで……。」

母さんが怒りと悲しみを交ぜた顔で私を見てくる。

「私は、今まで自分を殺して生きてきた。やっと自分が出せる場所が出来たのに、今更自分の気持ちを押し殺してまで生きたいなんて思わなかった。」

私は自分の思いをそのまま口にした。

「幸矢……。」

だからあのまま死なせてくれた方が良かったって思った。

でも。

今こうして生きているって事は、またお祖父様の為に生きていかなければならないのだ。

強いては、家の為に自分を偽り続けて生きていくことになる。

それは、私の意思を殺してしまうこと。

そして、偽りの人生を全うする事になる。

そんなの辛すぎる。

私は、お祖父様の操り人形じゃない。

なのに、また戻らなくてはいけないなんて……。








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