反省室の思い出
久し振りに入れられた反省室は、やけに懐かしく思えた。
畳四畳で四方を壁に囲まれており通気孔として上と下に5cm程の鉄格子が嵌められている。その部屋は、何代も前からある部屋で色んな跡が残っている。
あっ、懐かしい。
これ、私が掘ったヤツだ。
まだ、残っていたんだな。
反省室に入れられる時って、何時も従兄弟の悪戯が私の成にされていて、それに反論する度に入れられていたっけ……。
従兄弟は、お祖父様に自分を善く見せたくて、私に何でも擦り付けていたな。
尻拭いを全部させられたうえに、反省室に入れられて、飛んだとばっちりを受けて、ムシャクシャして怒りに任せてこの文字を掘ったんだよね。
あの時の思いが蘇る。
此処に入れられると、大抵外から冬哉兄さんが声を掛けてくれて……。
「幸矢……。」
これってデジャブ?
何て思っていると。
「幸矢……。お前、髪……。」
って、鉄格子の向こう側から、冬哉兄さんが驚いた顔で立っていた。
「兄さん?」
私は、何故そんなに驚いているのか分からずに首を傾げた。
そして。
「今まで、何処に……。」
兄さんは心配気に言葉を掛けてくる。
余程心配掛けて仕舞ったんだなと、反省はするものの、何処から話せばいいのか困ってしまうが。
「あの日、冬哉兄さんが告白の後に家に戻ったんだよね。お祖父様達と話をしようとね。出も、帰ってきたら入れ替わるように偽幸矢が学校に行ったから、私の居場所がこの家には無いと思い知らされてね、母さんとある町で暮らしていたんだ。其所では、女として過ごす事が出来てたんだけどね……。こうやって、連れ戻されてしまったの。で、お祖父様と衝突してこの有り様って訳。」
要所要所省きながら説明する。
あの町で成瀬に会った事は、話さなくてもいいだろう。
「それは、分かったが、其所って夏場はメチャクチャ暑くなるんじゃなかったか?」
冬哉兄さんが思い出したかの様に言い出す。
「そうだよ、良く覚えてたね。風通り悪いんだよね、風穴あっても。しかも、南部屋だから上の通気孔からの直射日光が当たるしね。」
苦笑するしかない。
冬場は逆で、寒くて居られないのだが……。
「早く爺さんに謝って、出して貰えよ。」
冬哉兄さんが辛そうな顔をして言う。
「そうはいかないよ。お祖父様は私にもう一度男に馴れって、言うんだもん。私は、女なんだもの。今更男の格好に戻って学校に行けないよ。」
私は、自分の自覚を顕にした。
今まで、言われるまま過ごしてきた。その反動が大きくなってる今、戻りたいとは思えないのだ。
「幸矢……。」
冬哉兄さんは、何と声を掛けて良いのか分からない顔をして私を見てくる。
「これは、細やかな私の反抗なの。今までの事も踏まえてのね。」
ここで妥協したら、お祖父様の思う壺だ。
「無理するなよ」
「うん、ありがとう。」
私は冬哉兄さんに笑顔でお礼を言った。




