出戻り
家に戻ると、奥の和室の部屋に連れて行かれた。
そこにはお祖父様と父が待ち構えていた。
私は、二人の前に正座をし。
「只今戻りました。」
二人に頭を下げた。
ピリピリした空気が、辺りを漂わせている。
この緊張感は、久し振りだ。
私は、頭を下げたまま何を言われても良い様に身構えていた。
ただ母の事に触れたら、何をするか分からないが。
「幸矢。すまなかった。」
とお祖父様からの謝罪の声。
私は、思わず顔を上げてしまった。
今まで、お祖父様に謝られた事が無かったので、間違いではないのかと疑ったのと私が思っていた事との咀嚼があった。
今度は、何事かと慌ててしまうのも無理無いと思う。
「お前の代わりを立てて学校に行かせたが、とんだ間抜けだった。」
お祖父様の代わりに父が話し出した。
何の事だろう?
ただ疑問しか浮かばなく、首を傾げるしかなく父の話しの続きを待った。
すると、お祖父様が突然私を抱き締め。
「偽幸矢は、学力が伴っていなかった。それに、忍耐力もなくて、な。幾らお前に似ていても、全然違うんだとはっきり分かったんだよ。本当にすまなかった。」
二度目の謝罪に戸惑うばかりの私。
何?
今度は、戻って来いとでも言うの?
「だから、戻って来い。この家に……。」
お祖父様の無慈悲な言葉。
此方も反省してるから、許してくれそして家の為に戻ってこい。と言っている気がしてならない。
この家に戻るって事は、男に戻れって事だよね。
今の私をまた封印しろって事だよね。
家の為に、自我を殺さなきゃいけなんだよね。
其所までして、 "家" を守らないといけないの?
ここを去る前の私なら、言われるままになっていたかもしれないが、今の私はそれを良しとしない。
「お言葉ですが、それは出来ません。私は、男には戻りません!」
私は自らの意思ではっきりとそう言葉にしていた。
「幸矢!」
お祖父様が耳許で怒鳴る。
一瞬、耳の聞こえが悪くなるが、直ぐに戻った。
「お祖父様たちに振り回されるのは、もう懲り懲りです。私は私なのです。お祖父様たちの言うことを聞く御人形ではありません。自分の意思もきちんと持ち合わせているのです!」
私は二人を睨み付けて言う。
「幸矢! 言いたいことはそれだけか。反省室に放り込んでおけ!!」
お祖父様が顔を真っ赤にさせて父に言う。
反省室か……。
父に連れられて、反省室に向かう私だった。




