行方知れず
あれから、たまに幸矢のクラスを覗くが、彼女はそこには居なかった。
いったい何処に行ったんだよ。
彼女の事が気になり、期末も散々だった。
夏休みに入り、家に戻って直ぐに幸矢の道場に顔を出した。
幸矢が居ると思っていたのだが、彼女の姿はここにもなかった。
俺は、おじさんに声をかけた。
「こんにちは。ご無沙汰してます」
俺がそう声をかけると。
「あぁ、冬哉君。ずいぶんとご無沙汰だね。前より男面がよくなった」
ってにこやかに返してくる。
「あの、幸矢は今何処に居るんですか?久し振りに手合わせをしたいと思ったんですが」
俺は、おじさんの顔色を伺うようにそう声をかけた。
すると、おじさんの顔がみるみるうちに青くなっていくのを見て、ここには居ないんだと悟った。
じゃあ、何処にいるんだ。
俺の可愛い幼馴染みは?
そんなことを思っていたら。
「久し振りじゃないか、冬哉君」
と声がかかり、振り返ればおじいさんがそこに居て、何か言いたそうな顔をしていた。
どうやら、ここでは言いにくいことらしくて顎で廊下にと指図され、渋々出ると。
「冬哉君。幸矢が、何処に居るか知らないか?」
と、切羽詰まったような声で聞いてきた。
俺は、首を横に振った。
俺だって、幸矢が何処に居るか知りたいんだよ。
何で、おじいさんが幸矢の居場所を知らないんだ?
俺の対応を見て、おじいさんは肩をガックリと落とし。
「そうか……」
と一言呟いて、背を向けていってしまった。
何が、どうなってるんだ?
って言うか、幸矢今何処にいるんだよ。
心配で、受験勉強が手につかないんだ。
早く帰ってきて、可愛い笑顔を見せてくれよ。




