意外と鋭い
図書室であれこれ調べてる内に外が夕闇に染まり始めた。
気が付けば、寮の門限ギリギリだ。
「成瀬。寮に戻らないと…」
「まだ、平気だろ?」
呑気に構えてるが……。
「あの時計、十分遅れてるんだよ」
私が言うと。
「何故、それを先に言わないんだ!」
文句を言いながら、片付けだす。
「綾小路…。御前さぁ、時々だが、声が高くなるんだな」
ドキッ……。
まさか、バレタ……。
イヤ、そんなはずは……。
そんなはず無いよな。
「おい、何ボーとしてるんだ?急がないと反省文書かされるぞ」
成瀬が、声をかけてくる。
「あ、あぁ……」
私は鞄を掴むと図書室を後にした。
寮の門限ギリギリに入り、自室に向かう。
「お前って、本当に待遇がいいよな」
成瀬が、羨ましそうに言う。
「それは、一寸した事情があるからで……」
言葉を濁す私に。
「なんだよ、その事情って?」
エッと……。話せるわけ無いだろう。
「まぁいいや。今度話してくれれば…」
って、それ以上追求してこなかった。
成瀬と別れて、個室の自分の部屋に入ると Tシャツにジーパンに着替えた。
夕飯の時間まで少しあるな……。
そうだ。
冬哉兄さんのところでも行こう。
私は、部屋を出て兄さんの部屋を訪ねることにした。