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嫉妬心

そういえば、さっき幸矢が図書室に向かってたなぁ。

今の時間自習だし、抜け出してもわからないだろう。


俺は、教室を抜け出して図書室に向かう。



「幸矢、居るか?」

俺は、図書室の戸を開けると声をかけた。

奥に進むと幸矢が一人机に向かっているのが見えた。

俺は、その隣に座る。

「冬哉兄さん、授業は?」

幸矢が、怪訝そうな顔をして俺を見る。

「あぁ、自習なんだよ。で、幸矢が居るのが見えたからさ」

何か、誤魔化してるみたいだな俺。

「そうなんだ」

納得したのか幸矢がまた、手を動かし始めた。

幸矢が此処に一人で居るってことは、体育の時間か…。しかも、水泳。

「幸矢…」

調べ物をしてる幸矢に声をかけるのは、忍びなかったが。

「何?兄さん」

幸矢が手を止めて、俺をみる。

「幸矢。この間言いかけた言葉を今言ってもいいか?」

俺の言葉に首を傾げる。

そんな仕草が、女の子ぽくみる(実際女の子なんだって)。

「そうだね。私も気にはなってたから…」

思い出したのか、そう言い出した幸矢。

オレから私に変わってる。

幸矢が、俺の前では私と使い分けてる事が、嬉しいが、俺としては別な答えも欲しいとこだ。

「俺、幸矢の事が好きだ。お前が中学の時から、気になる女の子だったんだ」

真顔で幸矢に告白した。

のにも関わらず、幸矢の顔が固まっていくのがわかった。だが、もう後には退けない。

「俺にとっては、大切な女の子なんだ。この間のキスもお前の事が愛しくてつい…」

そこで、言葉を区切った。思い出されるのは、アイツの事。

「幸矢は、アイツが…好きなのか? 」

俺は、気付いたらそう聞いていた。

「アイツって祥…成瀬の事?」

もう、下の名前で呼ぶような関係なのか?

嫉妬するぞ俺。

「そうだよ。お前、今まで男だろうが、女だろうが下の名前で呼ばせた事無かっただろう。だから、あいつは特別なのかな…と思ったんだ」

嫉妬心丸出しだな。

「わからない」

幸矢が、俯いてそう答えた。

「わからないって…」

自分の事だろ、何でわからないんだ?

苛立つ俺に。

「自分でもわからないんだ。誰の事が好きで嫌いなのか。私は、普通に育てられてないから、自分の感情さえわからない。だから、ごめんなさい。告白されても他人事としか思えない。だから、返事は出来ない」

幸矢はそれだけ言うと図書室から出ていった。


俺、ずっと幸矢を見てきたんだ。

何で、わからないんだよ!

って、俺がわかってやれてなかったのか…。


俺は、その場で頭を抱えた。

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