嫉妬
授業が終わったら、あっという間にどっかにいちまった。
今度、絶対に聞いてやるんだ。着替え、どこでしてるんだって…。
オレは、教室に戻り手早く着替え廊下に出た。あいつを探しに…。
「ったく、何処行ったんだよ」
口に出る。
フと振り返ったら、目的の人物を見つけた。
「幸矢!」
オレは、ありったけの声を張り上げた。
あいつは、驚いた顔をしてこっちを見る。
そんなのお構いなしに幸矢に声をかける。
「お前。何処に…」
オレは、言葉を失った。
手首に巻かれてる包帯が目に入った。
「それ……」
何時やったんだよ。
やったとしても、さっきの授業だろうが……。
「えっ、あぁ。さっきの授業で捻っただけだ。大したこと無いから、心配するな」
笑って言いやがる。
「何時やったんだよ!」
オレは、幸矢の腕を捕る。
「幸矢…」
オレの背後から、声がする。
最近知った声だ。
「お前、無理するなよ。利き腕なんだからな」
オレの横に来たそいつは、優しい目付きで幸矢に注意する。
ハッ…。
何だ、何でそんな目でこいつを……。
労るような目付きで、心配そうに見てる。
何が、あるんだ?
「兄さん、ありがとう」
ヤツがお礼を言うと。
「ああ」
って言葉が返ってきた。
「幸矢。お前のそれって…」
あいつが、手当てしたのか?
「そうだよ。冬哉兄さんに手当てしてもらったんだよ」
罰が悪そうな顔をしたかと思ったら、怒りやがった。
「何で、アイツが…」
オレの口から、そんな言葉がこぼれる。
「祥。ほら、教室に戻るぞ」
幸矢がオレの背中を叩く。
「……っ」
声にならない声が聞こえてきた。
それを聞きながら。
「なぁ、何で、アイツが知ってるんだ?」
オレは、苛立ちを押さえながら、言葉を紡ぐ。
「何か、見てたみたいだよ」
見てた?
「教室から、グランドが見えたんだって、たまたま僕が倒れた時だったらしくて、その時に気付いたそうだよ」
何ともないように言うヤツにオレは、腹が立った。
倒れた?
あの時にヤったのか?
「祥。授業始まる、急ごう」
幸矢に促されて、教室に足を向けた。




