疑問
しかし、冬哉兄さんの口付け(アレ)って、一体何の意味があったんだ?
確かに冬哉兄さんには、憧れている。
でも、ただの憧れだけなのかは、わからない。
教室に向かう中、考えていた。
「幸矢!」
呼ばれて、顔を上げると祥が駆け寄ってきた。
「お前、何処に…」
言い掛けて、私の手首に目がいってる。
仕舞った。
隠すの忘れてた。
私は、慌てて手を後ろに隠す。
「それ…」
祥が隠した腕を掴んだ。
とても心配そうに聞いてきた。
「えっ。あぁ、さっきの授業の時に捻っただけだ。大したこと無いから、心配するな」
微苦笑を浮かべた。
「何時やったんだよ?」
祥の顔付きが代わった。
さっきのオチャラケから、真顔に。
そこに。
「幸矢!」
冬哉兄さんが、駆け寄ってくる。
私は慌てて祥の腕を払った。
「お前、無理するなよ。利き腕なんだからな」
冬哉兄さんはそう言って私の肩を軽く叩くと行ってしまった。
そんな兄さんの後ろ姿に。
「兄さん。ありがとう」
お礼をのべた。
「ああ」
照れ隠しのような返事が返ってきた。
「幸矢。お前のそれって…」
祥が、怪しげに聞いてきた。
「そうだよ。冬哉兄さんに手当てしてもらったんだ」
私の口調が少し怒りっぽくなってしまったのは仕方がない。
本当は、誰にも知られたくなかったからだ。
その苛立ちから、口調が荒くなってた。
そんな私の返答に祥は黙り込んだ。
かと思ったら。
「何で、アイツが…」
って呟き声が聞こえてきた。
なんか、悔しそうなんだが、私の気のせいかな?
そんな祥に。
「祥、ほら、教室戻るぞ」
私は、祥の背中を軽く叩く。
イタッ。
仕舞った、つい利き手で叩いちゃった。
少し、顰めただろう顔を見られないように自ら歩を進める。
「なぁ。何でアイツが知ってるんだ?」
私は、後ろに居る祥を振り返る。
祥が顔を曇らす。
「なんか、見てたみたいだ」
さっき聞いたことをそのまま告げた。
キーンコーンカーンコーン………。
チャイムが鳴る。
ヤバッ。
「祥。授業始まる。急ごう」
祥を促して教室に急いだ。




