1 雪とクリスマス
雪の中、旭を待つ。雪の中、旭の名前を呼ぶ。
凍えそうな手を握り締めて
微かな希望と失いかけた想いを胸に抱き
息も凍るような雪の中、旭を待ち続ける。
「いつ来るかな?」「来てくれるかな…」不安を胸に押し込み、明るい未来を想像して
心まで白くしそうな雪の中、旭の名前を呟く。
まだかな?まだかな?
待っても待っても誰も来ない。
ただ、時が過ぎるだけ。
あぁ時間が過ぎるのは早い。
いつの間にか辺りは暗くなり、街を照らす街灯がついていた。
いよいよ心も折れ始め、もう帰ろうかとも思えてきた。
「やっぱり期待するんじゃなかった」と後悔しながら帰り支度をはじめる。
もう、身も心も冷え切っている。溢れそうな涙を必死で抑え、マフラーを締め直す。
「忘れよう。旭なんか…」と思っていたら、進行方向から走ってくる1人の影が見えた。
「蒼依ーっ!」その人は私の名前を呼ぶ。聞き慣れたあの声は…間違いなく旭だった。
抑えていた涙が一気に溢れ出す。旭は息を切らして私に駆け寄る。
「遅くなってゴメン。待たせて悪かった。…あと、メリークリスマス。」
私は嬉しくて思わず旭の胸に飛び込んだ。
「俺と、結婚…してくれない?」
気が付くと私の指には最高のクリスマスプレゼントの指輪が輝いていた。
~HAPPY END~