鏡写し1-5
ゆきちゃんは、叔母さんのひとり娘だった。歳は私と同じで可愛かった。勉強もスポーツだってできてみんなの人気者だった。私とゆきちゃんはまるで双子のように似ていた。近所の人も学校の人も間違えるくらいに。私もゆきちゃんも互いを自分のように理解していたし、無くてはならない存在だった。
「いまそのゆきちゃんは、どうしているんですか?」
古都野さんの質問になかなか私は答えを言い出せなかった。体が動かない。声がでないよ。
「アルバム見せて頂いても構いませんか?」
小さく頷くので精一杯だった。古都野さんはまず私が持ってきた一番古いのから開き、見始めた。アルバムが開かれるたびに体から何かが崩れ落ちていくような気がして、自分が壊れていかないように自分の体を抱きしめていた。
「…さん、…藤さん、佐藤さん!」
古都野さんの声が遠くから聞えたような気がした。硬く閉じた目を開けたら、古都野さんは私の目の前で泣きそうな顔をして私を見つめていた。
「いくら声をかけても反応がなくて……!!具合が悪いのかどうしたらいいかわからなくて……。大丈夫ですか?どこか痛いんですか?寒いですか?大丈夫なんですか?」
どれだけ時間が経っただろうか。硬く自分を抱きしめていた手は血が流れていないみたいに白く冷たくなっていた。古都野さんは私の手を見つめながら私の手を握り暖めてくれていた。
「古都野さん……私もう大丈夫です……。手冷たくなりますよ……。」
古都野さんは私の声が聞こえてるのにずっと手を握ってくれていた。その手を握り返した。やっと古都野さんは私を見てくれた。
「本当に大丈夫なんですか?まだ手も冷たいし、顔色も悪いですし……。」
今出来る最大の笑顔を古都野さんに見せた。なにも悟られないように。
「無理に笑わないでください……。出会ってまだ短い時間しか過ごしていないですし、私のこと信頼してなくても構いません……。でも、無理に笑うのはやめてください……。」
今までばれなかったのに。どんなに辛くても笑って見せて隠していたのに、隠せてきたのにばれてしまったらしい。そう理解したら、体から力が抜けていった。もう無理に笑わなくていいんだ。何年振りだっただろうか涙が止まらなくなっていた。声の殺し方も分からず小さい子供のようにただ泣き続けた。古都野さんは、ただ私のそばにいてくれた。