鏡写し1-2
ゆきちゃーーーん、どこぉ……。……、あっ……、ゆきちゃんいたぁ……。なんでぇ、どこいちゃうのぉ。
揃いの浴衣を着た女の子を見つけ、幼い私は泣きながら彼女の手を引っ張りながら責めた。よっぽど寂しかったのか私の文句はとまらなっかた。でも、彼女はにこにこしながら文句を聞いていた。
ここちゃん、私ね、もうここちゃんと花火見たり、スイカ食べたり、お花見したり、雪だるまつくったりできないんだ……。それに会えないんだ。ここちゃんと遊べないのは悲しいけど、ずっとここちゃんのこと見てるから。いっぱい笑って素敵なお姉さんになってね。じゃあ、ばいばい。
ゆきちゃんは私の手を振りほどいて人混みに走っていった。私はひたすらゆきちゃんを呼びながら泣いていた。どんなに手をのばしても届かない彼女に向かって叫び続けた。
ゆきちゃーーーん、ゆっ、きちゃぁん、ゆきちゃーーーーん……
「……ゆき……ちゃん……。」
手をのばした先にはゆきちゃんの背中は無く、見慣れた部屋の天井が広がっていた。泣きながら目を覚ますのは何年ぶりだろうか。それに、ゆきちゃんの夢を見たのもかなり久しぶりだった。涙を拭いて時計を見たら10時を回っていた。今日は仕事の休みもとれて古都野さんのところに着物を持っていく約束だった。約束に間に合わせるにはいますぐ家を出ないと間にあわないことに気がついた。腫れた目はメイクで誤魔化せるだろうか。急いで準備をして車の鍵を握り締めて家を出た。
「すいません。約束の時間に遅れちゃって……。」
「構いませんよ。車だと電車と徒歩で来るよりも分かりにくいでしょうし。道路も細くて運転しにくいでしょう。疲れたでしょうし、お茶にしましょうか。良い茶葉が手に入ったので一緒に飲みましょう。」
古都野さんは遅れたことを気にすることもなく私を迎え入れてくれお茶の支度をしに店の奥に行ってしまった。古都野さんの言うように音有堂への道路はかなり細く入り組んでいた。次にくるときは電車にしよう。そんなことを考えながらトランクいっぱいに詰めたダンボールを店の中に入れた。まるでここに住むようなダンボールの量に可笑しくなってつい笑ってしまった。
「佐藤さん?どうしたんですか?笑ってますけど。」
「いや、まるで私今日からここで暮らすのかっていう量の荷物だなぁって。そしたら面白くて。」
「佐藤さんがよろしければ住んでいただいて構いませんよ。古い家でよければですが。」
「ふふふ、とても素敵な提案ですね。」
私は古都野さんの言葉に惹かれたが深く触れることもなく、だしてもらったお茶を飲んだ。
「うわぁ、このお茶すごくおいしいです!!」
「それは良かったです。この箱すべてですか?」
「あ、はい。そうなんです。ダンボールで15箱ほどあります……。」
「何箱か封も開いてないようですが。それはなぜ?」
「だんだん開けるのも面倒というか、怖くなってきちゃって……。」
古都野さんは宛名の古い箱から開け始めた。一つ目の箱のなかは、小さい箱にさらに小分けにされたものがたくさん入っていた。ひとつ目の箱には小さな布が入っていた。
「これは何でしょう?」
「これは、赤ちゃん用の産着のようですね。失礼ですが、佐藤さんご出産のご予定は?」
「残念ながらないですね。恋人もいないですよ。」
「そうですか。佐藤さん可愛らしいのに以外ですね。」
おっと以外な切り替えしがきた。深く触れてこないのが幸いだった。小さい箱をどんどんあけていった。
「どの箱も赤ちゃん用のものばかりですね。それに新品の物ではないようですね。見覚えとか?」
「ないですね……。」
古都野さんは、困った顔をしながら次のダンボールを開けた開けた。そこにはとても小さなゆかたがでてきた。
「わぁ、小さい。こんなの誰が着るのかしら?」
「そうですね、一歳か二歳くらいでしょうか。これも色違いがたくさんありますね。柄や色的に女の子向けのようですが。」
確かに薄いピンクや黄色のものが目立った。