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伝え屋  作者: 佐々木 和真
鏡写し
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鏡写し

 この着物どうしよう……。


 この気持ちがくるくると頭を回り始めてもう一週間以上経っていた。今、私の手元には叔母が所有の着物が大量に送られてきていた。最初は一着二着だったのが今では二十着ほどに増えていた。叔母に尋ねようと思っても二ヶ月前に亡くなり真意はわからなくなっていた。叔母名義で送られてくるが、実際送ってくるのは母だった。母にどうして送り続けてくるのか尋ねても私は知らないの一点張りで困っていた。母からくる着物は新しそうな物からすごく古そうな物があったり、さらに子ども物まであった。会社の人や友人に相談してもどうしたらいいかわからなくて本当に困っていた。着ないなら売ってしまえばいいと言われたりもした。元々着物を着るのが趣味とかではない私が持っているよりそのほうがいいと思っていた。だだ、なんだか売るのに対して罪悪感もあった。まだ、亡くなってすぐだから?それも違う気もしていた。この不思議な気持ちがある限りどうしようもできない気もしていた。


 「着物、小物、本、なんでも相談に乗ります。まずはこちらにメールを……。」


 たまたまネットで見かけたこの言葉になぜか興味を持ってしまった。普段ならしないのに書いてあったメールアドレスにメールをしていた。今の現状や不思議な気持ちのこともすべて書いたメールを。


 「はぁ……。なにしてんだろ……。」


 誰もいない部屋でPCの機械音とため息だけが聞こえた。



 数日後、メールに書かれた住所を頼りに行くとそこには「音有堂(おとありどう)」と書かれた看板がちょこんとおいてある洋館と日本家屋を足して割ったような古い一軒家にたどりついた。小奇麗だけど入りにくい空気感があっって、ちょっとお店の近くをうろうろしていたら中から着物姿の女性が出てきた。凛とした女性ってのはこんな人なんだな……。つい、見とれていた。


 「あの、メールくださった方ですか?」


 「あっ、いえ、あ、そうです…。佐藤です…。」


 見とれたことといきなり話かけられたことでかなり動揺した私はもごもごと自分の名前を伝えた。


 「ようこそ、音有堂へ。外で立ち話もなんですし中へどうぞ。」


 女性は私を建物の中に招いてくれた。中は外観よりとてもきれいで古さも気にならなかった。ただいろんなものが置いてあった。おもちゃや本、ガラスケースに入ったネックレス。本当にいろんなものがあった。


 「駅から離れてますけど迷いませんでしたか?はじめ来てくださる方よく迷われるんですよ~。お飲物なにになさいますか?紅茶、珈琲、日本茶などありますよ。」


 「迷いはしませんでした…。あ、じゃあ、紅茶をお願いします。」


 「わかりました。少し待っててもらえますか?お茶菓子お持ちしますね。」


 「いや、そんな、あ……。」


 言い終わる前に奥へ入って行ってしっまた。



 「えーっと。今日のご相談は着物に関してでしたよね?」


 ひとしきり、お茶とお菓子をいただいてから店員さんは話を始めた。この間のメールを印刷した紙を読みながらきいてきた。


 「すいませんが、もう一度相談内容をお話しいただけますか?いろいろ確認もしたいので……。」


 「わかりました。」


 私はなるべく細かく話をした。それと今の不思議な気持ちも話していた。正直こんな話すつもりはなっかたがこのお店の雰囲気とか店員さんの表情とかでついつい話すぎてしまった。


 「佐藤さんのお気持ちはわかりました。今日は着物は……?」


 「あっ。わすれてしまいました……。すいません。」


 問題の着物持ってくるのを忘れてたら、ただお茶をしにきただけじゃないか……。うなだれていたら、店員さんが優しく微笑んで、


 「次回で構いませんよ。いつでも構いせんよ。」 


と言ってもらえたのでよかった。それに、またこそお店に来れると思うと嬉しかった。私は店員さんと世間話をしながらお茶をした。


 「あの、店員さんのお名前まだ……。」


 「あっ、すいません。ついつい忘れてました!!音有堂店主、古都野音葉(ことのおとは)と申します。以後お見知りおきを。」


 古都野さんは見とれるくらいきれいにお辞儀をしてくれた。


 

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