「君の責任だ、君の責任だ。」
東京都 恵比寿65‐8住宅街
「はい、そこは任せて下さい。えぇ、自信があります。…はい、6年前のような事は繰り返しません。…はい…もちろんです。…はい、すいません。失礼します。」
男は相手の携帯が通話を切ったのを確認して、携帯を乱暴に閉じた。
東京の高級住宅街に佇む近代的なデザインの豪邸は、男一人が住むには広すぎて、スペースは有り余っている。
学校の教室より一回り小さいくらいのベッドルームには、贅沢なまでに大きなダブルベッドがドドンと置かれ、清潔そうな白いシーツと布団が被せられていた。
「くっそ!!」
男はベッドルームに入るなり、そんなベッドに思い切りダイブして叫んだ。
−−−今日はいつもより電話が多かった。どれもこれも同じ内容だ。
男は先程までの通話を思い出し、歯が欠ける勢いで強く歯ぎしりした。
−−−俺の何が悪い?いや、俺は悪くない。悪いのは全てあいつなんだ!!!
頭の中に浮かぶ名前はただひとつ。
彼はその名前を、頭の中でもみくちゃにして、火をつけた。
−−−今だにハッキリ覚えている!俺の輝かしい人生と、その後味わった地獄を!
目をつぶり、脳裏に焼き付いたまま離れない忌ま忌ましい記憶を、ひとつ、ひとつ、と呼び起こしていく。
−−−あぁ、そうだ、覚えているさ!あの時の事なら何でも答えられる…
次第に歪んでいく彼の顔は、まさしく鬼のようであり、若々しさや本来美形であるはずの顔は何処にも見受けられない。
「君の責任だ、君の責任だ…君の、責任だ…きみ、のせき…にんだ…」
記憶の中に流れ続けるそのバックミュージックを紡いでいく姿は滑稽にもみえ…
そして、彼の頭は8年前に遡る……