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イマ ココ ソシテ

作者: 石本公也

私の心は落ち込んでいる。

大人達は、まだ考えてすらいない進路の事を聞いて来る。未来の事なんか知らないし、考えても私には志す理由が無い。将来の夢も無いし、どうしたらいいのか分からない。

「あああぁ~」

せっかくのゴールデンウィークだと言うのに、私の心は酷く落ち込んでいた。

将来の事に加え、追い討ちの様にお気に入りで行きつけの喫茶店が潰れていた。

「佳奈、そんな溜息ついてたら、すぐに老けちゃうよ」

私の横にいた友達の優乃(ゆうの)が言ってきた。

「もうっ優乃、そこは老けるんじゃなくて、幸せが逃げてくんでしょ」

私は優乃の言葉を訂正する。優乃は、そうでしたーと舌を出して笑った。

だけど私は笑わない。心が沈んでいると、可笑しくても表情が動かない。

私は空を見上げた。晴れてなくて、どんよりと曇っていた。私の心みたいに。

「今日の空はどんな感じ?」

優乃が聞いてきた。私は空を見上げたまま、

「うーん、薄暗い雲の中に黒い雲があって、なんだか暗い感じになっちゃうな」

と答えた。

大通りより路地が好き、

ホールなんかより部屋が好き、

画面とかより紙が好き、

そして、ふと見た景色に心奪われる私は、将来の事とか、やりたい事とか言われても、ピンと来ない。

私の横にいる川里(かわさと) 優乃は、やりたい事が決まったら、それに向かって一生懸命に進む様な子で、今はイラストレーターになりたいとかで忙しそうだ。

まあ、私からしてみれば夢が決まって一生懸命な人達は、輝いていて、でも忙しそうなんだけど。

そんな事を考えながら、私は、優乃に聞いた

「そういえばもう一人呼んでるって聞いたけど、誰をよんだの?」

すると優乃は、私の方を向いて面白そうに

「あのね……(たかし)クンを呼んだよ」

と言った。

「隆⁈」

この時、私はどんな顔をしていたんだろうか。ただ、優乃の表情から察するに私は相当おかしな顔をしていたんだろう。

歩いていると、駅前にいる男子が目に付いた

赤羽(あかはね) 隆。

私と優乃の知り合い。剣道部に所属していて、背が高い。こいつは、将来建築士になるとか言っている。

「よっ優乃、佳奈、三人ってのはなんだか久しぶりだな」

前々から思ってたけど、なんでこいつはいつも明るいんだろう?

「考えてみたらホント久しぶりだね。今日は色々遊ぼうか」

優乃はいつでも楽しそうだ。

「佳奈、お前こうゆー日ぐらい楽しそうにしてろよ」

そう。そして私は、いつでもつまらなさそうと言われる。私は、楽しい事は楽しんでる。

でも、どうしても、楽しんでるはずなのに、私は、心の奥で自分に向かって、なにしてるの?って問いかけてしまう。そして、一人になった様な感覚に襲われる。

二人は、「心の底から楽しんでないんだよ」と言って来るけど、どうやって心の底から楽しむのだろう。

「やっぱり遊ぶとこと言ったらここだね」

優乃の声で私はハッとする。その場所は、

ゲームセンター。確かにクラスの皆も、遊ぶと言えばゲームセンターだと私は思った。

ゲームセンターの中は、結構広くて、色んな人がいた。私は少し圧倒されていたけど、優乃は違った様で

「あそこにプリクラあるじゃん。あれやろう」

と走って行った。プリクラはゲームセンターの奥にあって、よく入り口からあれが見れたなと、私は感心した。

「まず最初に一番奥に行くのか…」

隆が言う。私は隆に質問をした。

「隆はさぁ、どうして建築士になりたいとか思ったの?」

この質問は不意打ちだっただろうか、隆は少し驚いた表情をして、

「うーん、…まあ、理由ってほどじゃないんだけど、家ってさあ、そこに住んでいる人の、一番落ち着く場所だろ?」

確かに、例外はあるだろうけど、自分家は、それだけで落ち着ける気がする。

「だから、色んな人が落ち着ける場所が作れる人に憧れて……」

何かをしたいワケじゃなくて、憧れで決めたんだ……

私は驚いた。夢を持ってる人って、そこでやりたい事があるものだと思っていた。

隆は「変かな」と言って頭をかいた。

「ううん」

私は首を降った。

変じゃない。むしろ、進路を決めるのに目標を持って無いとダメなんて考えてた自分が変だ。

「佳奈、隆君、遅い!早く来て」

優乃がプリクラの機械の前で呼んでいる。

「ごめん優乃。今いく」

プリクラの中に入って、フレームを設定する。程なくして、機械がカウントし始めた。

『5…4…3…』

未来の事なんか分からない。でも、私の気分は明るかった。

『ハイチーズ』

プリクラのカメラが光った。

初めて短編を書きました。とっても難しいですね。今回は女の子視点を描きたくて書いてみたのですが、馴れないと何度も手が止まります。

読んで下さった方、本当にありがとうございました。

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