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個人タクシー

作者: ことり
掲載日:2026/03/07


その日はとにかく寒くて、身体も疲れてて荷物も多くてと、いろんな理由をつけてタクシーで帰ろうとタクシー乗り場へ向かった。


タクシー乗り場に着くと、先客が二組いたけど、それぐらいならまぁ待てる。


そう思って列に並んだはいいが、なかなかタクシーが来ない。

もう諦めて歩いて帰ろうか?

だけど、振り返ると私の後ろに長く列が出来ていた。


ここのタクシー乗り場は他の通行の邪魔にならないように壁あり、列から出るのに躊躇した。


私は、列から出ることを諦めて待った。


先の二組がタクシーに乗車して、私が一番前になった。


なかなか来ない。


そう思った時だった。


一台の個人タクシーがスッとタクシー乗り場に入ってきた。


このタクシー乗り場は◯◯タクシー乗り場と看板に書かれている通り、普段はそのタクシー会社のタクシーしかやって来ない。


ああ、もしかしてお客さん乗せてるのかな?

降車ならまだ分かる。


しかしその個人タクシーは空車だった。


その時、私が感じたことは、個人タクシーでもこの乗り場使って良いのかというわずかな疑問と、車高が高いタクシーで良かった、屈まなくて済む。腰が痛い。


という疲れた思考だった。



「どうぞ〜。」と声をかけられて入った車内は、外の凍てつく様な寒さから解放されて、ほっと息を吐くほど快適な温度だった。


「どちらまで?」と尋ねられ、自宅の住所を言ってから、よく間違えられる地名のため、最寄りの有名な公共施設の名前を出すと、「ああ、大丈夫ですよ。分かります。」と返答されて、安心して背もたれに背中を預けた。



え?


背もたれに背中を預けると身体が包み込まれるように沈んだ。



「どうぞどうぞ、リラックスして休んでください。」



運転手さんに少し笑いながら言われて、この運転手さんにとって、私の驚いた反応はよくみる反応なのだろう。


続けて理由を話してくれた。


この個人タクシーのお客さんの中には、病院通いの方が乗られるそうだ。


腰椎圧迫骨折など少しの振動でも腰に負担がかかる方もいるらしく、腰に優しい座席シートを付けたとのこと。


・・・なるほど、凄く楽だ。



「ですが、ひとつだけ欠点がありまして。」


「そうなんですか?」



欠点?特に思いつかないけど?

ずっと座っていたいぐらい心地良いよ。



「気持ち良すぎるのか、寝てしまう方がいらっしゃるんですよ。」



少し笑いながら言う運転手さんに、それも仕方ないと思いながら笑い返す。



「私達はお客様に眠られたら揺さぶって起こすことも出来ないので、声かけても起きない場合は、交番でお巡りさんに助けてもらうこともあるんですよ。」



付け加えられた言葉に私は驚いた。


運転手さんはお客様に触ることは許されないことらしい。

確かに言われてみれば、財布とったとか痴漢の冤罪など、さまざまなトラブルをまねかないためにも、その方がいい。


でも、終電で寝ている人の肩をポンポン叩いて起こす駅員さんのイメージもある。

電車だからか?

ドラマの中で観たとかもある。

そのせいか?


介助とかも基本的に出来ないそうだ。


それはなかなか不便。


確かにとも思うが、臨機応変に出来たらいいのになとも思いながら、運転手さんの話を聞く。


運転手さんは最終手段にならないように、お客様を眠らせないようにと、とにかく話しかけるという。


うんうん、今日あのタクシー乗り場に来たのはあまりにも行列が出来てたから、寄ったんですか。

へぇ〜なかなか来ないから助かったわ。


座席が心地良すぎて、デスクワークが多い人とか同じ物をその場でスマホで購入した人も何人か居たんですか?へぇ〜。


・・・もしかして今がそれか?


大丈夫ですよ。めちゃくちゃ疲れてますけど、寝ませんよ〜。



居心地良いタクシーは運転手さんのスムーズな運転で自宅に着いた。


降りるのが残念だと思ったことは、きっと私だけじゃない。


お読み頂きありがとうございました♪

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