都市へ行こう
第9話
それから、一年が経った。
アレンは十歳になっていた。
畑仕事は一人前とは言えないが、
邪魔にはならない。
狩りの手伝いも、
後ろについて歩く役なら問題ない。
そんな毎日だった。
その日の夕方、
森の近くで魔物と遭遇した。
犬より少し大きい。
動きが速い。
アレンは一度だけ桑を振り、
距離を取った。
突進してきたので足だけ桑で斬りつけた。
「…」
すぐに走って村へ戻り、
大人に知らせた。
あとは任せる。
それでいい。
その夜、村で集まりがあった。
「都市へ行く子を決める」
十歳になった子は、
三年間、都市で学ぶ決まりだ。
アレンの村からは、五人。
名前が呼ばれる。
「アレン」
翌朝、
母親との短い別れをつげる。
五人の子どもと、数人の大人が集まった。
護衛役だ。
父も、その中にいた。
「歩いて二日だ」
「途中で泊まる宿はない」
父が言う。
「夜は野宿する。」
誰も文句は言わなかった。
出発。
畑を抜け、
森の外を歩く。
昼は黙々と進み、
日が傾いたところで止まる。
「今日はここまでだ」
父たちが周囲を確認し、
簡単に火を起こす。
子どもたちは固まって座った。
夜の森は、
村よりずっと暗い。
音も、近い。
アレンは、桑を抱えたまま座っていた。
怖くないわけじゃない。
でも――
父が近くにいる。
護衛の大人もいる。
それで十分だった。
夜は何も起きなかった。
翌朝、
簡単に体を動かしてから再出発。
足は重い。
でも止まらない。
昼過ぎ、
遠くに高い壁が見えた。
都市だ。
「着いたぞ」
父の声で、
全員が少し息を吐いた。
歩いて二日。
野宿一回。
それだけで、
アレンは今までと違う場所に立っていた。
父は門の前で立ち止まり、
アレンの肩に手を置く。
「ここからは、勉強だ」
アレンは頷いた。
畑でも、
狩りでもない。
新しい場所。




