初戦。怒られる
第7話
畑の帰り道、
アレンは桑を肩に担いで歩いていた。
夕方。
森の影が長く伸びる時間だ。
「……?」
前の草が揺れた。
そう思った瞬間、見た事がある黒い影が飛び出してきた。
魔物だった。
犬の角つきのやつ。
四足で、牙が短い。
畑荒らしによく出る、弱い部類の魔物だ。
(……近い)
逃げるには遅い。
アレンは、桑を両手で握った。
農具だ。
剣じゃない。
魔物が低く唸り、跳ぶ。
その動きが、
はっきり見えた。
脚が沈む。
背中が丸まる。
次に来る方向が分かる。
アレンは半歩だけ横にずれた。
牙が、空を切る。
「……!」
自分でも驚くくらい、
体が軽かった。
振り返るように、桑を振る。
狙ったわけじゃない。
ただ、そこに出しただけ。
鈍い音がして、
桑が魔物の頭に当たった。
魔物が転がる。
すぐに起き上がるが、
動きが少し遅い。
(……次は低い)
魔物が突っ込んでくる。
アレンは桑の柄を前に出した。
脚に当たる。
魔物がバランスを崩し、倒れた。
でも、体は止まらない。
アレンは一歩踏み込み、
桑を振り下ろした。
一度。
二度。
魔物は動かなくなった。
静かになった畑道に、
アレンの息だけが残る。
「……終わり?」
腕は痛くない。
息も上がっていない。
さっきまでの恐怖が、
嘘みたいだった。
体の奥が、じんわり温かい。
疲れが消えていく感じがする。
理由は分からない。
「……怒られるな」
それだけは、分かった。
アレンは桑を持ち直し、
周りを見回した。
誰もいない。
「……埋めよう」
そう決めて、
道から離れ掘って埋めた。




