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4年後

第4話


四年後のアレン

四年という時間は、村では大した変化を起こさない。

畑は相変わらず畑で、

森は森のまま。

魔物も、減ったわけじゃない。

でも――

人は、変わる。

アレンは、九歳になっていた。

背は少し伸び、

腕や脚は細いが、前よりもしっかりしている。

幼児の丸みは消え、

動きに無駄がなくなった。

「アレン、そっち持てるか?」

父にそう言われ、

アレンは黙って頷いた。

畑の手伝いは、もう当たり前だ。

水を運び、

収穫した野菜を籠に入れ、

倉庫まで運ぶ。

重い。

でも、持てないほどじゃない。

「……よし」

籠を下ろし、

少しだけ息を整える。

母はそれを見て、微笑んだ。

「もう、立派な働き手ね」

「まだだよ」

そう答える声は、

少し低くなっていた。

同い年の子供たちも、

もう外で遊ぶだけじゃない。

畑を手伝う者。

家業を覚える者。

そして――

狩りの手伝いに出る者もいる。

アレンも、その一人だった。

「今日は、初めてだろ。ついてくるだけでいい」

村の狩人がそう言って、

アレンに短い木槍を渡す。

本物の武器じゃない。

危険な役割も任されない。

それでも、胸が少し高鳴った。

森に入ると、空気が変わる。

畑より静かで、

でも、何かが潜んでいる感じがする。

「音を立てるなよ」

狩人が小声で言う。

アレンは頷き、足元を見る。

落ち葉。

小枝。

踏むと音が出る。

ゆっくり、慎重に進む。

獲物は小さな鹿だった。

狩人が弓を引き、

短い音がして、倒れる。

「……すげえ」

思わず声が漏れた。

「静かに」

すぐに注意され、

アレンは口を押さえる。

解体は、まだ見学だけだ。

血の匂いに、少し眉をひそめる。

でも、目は逸らさない。

これも、村で生きるということだ。

帰り道、

獲物を担ぐ狩人の背中を見ながら、

アレンは思った

かっこいいな〜と。

畑と狩り。

日常と危険。

この村では、

その二つが地続きだ。

家に戻ると、

父が槍の手入れをしていた。

「どうだった」

「……疲れた」

「はは、最初はそんなもんだ」

父は笑い、

アレンの頭に手を置く。

「でも、ちゃんと歩けてたな」

それだけで、十分だった。

夜、布団に入る。

腕が少し痛い。

脚もだるい。

でも、嫌じゃない。

体が、ちゃんと自分のものになってきた。

そんな感じがした。

九歳のアレンは、

もう子供じゃないとは言えない。

でも、

幼児でもなかった。

村で生きるためのことを、

一つずつ、

当たり前のように覚えていく。

畑を耕すこと。

獲物を追うこと。

危険から逃げること。

そして――

まだ知らないが、

「戦わない役割」も、

少しずつ近づいている。

今はただ、

明日の手伝いのことを考えながら、

アレンは目を閉じた。


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