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戦える大人達

第3話



アレンの住む村は、小さな村だ。

家の数は五十ほど。

子供から年寄りまで合わせて、人数は三百人前後。

畑仕事をする者。

狩りに出る者。

鍛冶や大工のような、手に職を持つ者も少しだけいる。

そして――

戦える大人は、ほんの一部だった。

この世界には魔物がいる。

それは子供でも知っている、当たり前の事実だ。

だから村には柵があり、

だから槍や弓があり、

だから「いざという時に前に出る大人」が決まっている。

その一人が、アレンの父だった。

「魔物が出たぞ!」

昼過ぎ、村の外れから叫び声が響いた。

その瞬間、空気が変わる。

「来たか」

大人たちが一斉に動き出す。

女や子供は家の中へ。

男たちは武器を取る。

アレンも母に手を引かれ、

広場の端へ下がった。

見えた。

森の方から、魔物が走ってくるのが見える。

四足。

大きさは牛ほど。

魔物だ。

「数は……五体!」

誰かが叫ぶ。

父が前に出る。

剣を持ち、

腰には短い杖。

父の後ろには、

同じように杖を持つ男が二人、

何も持たずに手袋だけをはめた男が一人。

村で魔法を使える者たちだ。

「弓、先に撃て!」

矢が放たれる。

一本が外れ、一本が当たる。

魔物は止まらない。

父が杖を構え、短く言った。

「――《火》」

何かを唱えた

次の瞬間、

炎が弾けた。

赤い光が一直線に飛び、

魔物の肩に当たる。

魔物が咆哮を上げ、足を止める。

「今だ!」

別の男が前に出て、地面に手をつく。

「《土壁》!」

土が盛り上がり、

魔物の進路を塞ぐ。

残った一体が横から回り込もうとした瞬間、

もう一人の男が手を振る。

「《風》!」

突風が吹き、

魔物の体が横に流される。

剣と槍が、一斉に突き出された。

血が飛ぶ。

魔物が倒れる。

残り四体も、

時間をかけて仕留められた。

戦いが終わった時、

村は歓声に沸いた。

怪我人は数人。

幸い、死者はいない。

「今回は、早く気づいてよかったな」

誰かが言う。

父は剣を拭きながら、短く頷いた。

「五体なら、何とかなる」

アレンは、母の腕の中で、その光景を見ていた。

魔物は怖かった。

でも、それ以上に――

大人たちが、すごかった。

剣を振るい、

魔法を使い、

村を守る。

自分の父が、

その中にいる。

それだけで、胸がいっぱいだった。

家に戻る途中、

父がアレンの頭を軽く叩いた。

「ちゃんと下がってたな」

「……うん」

「いい子だ」

それだけ言って、父は別の大人のところへ向かった。

夜、布団に入っても、

昼の戦いが頭に残っていた。

炎の音。

風のうなり。

魔物が倒れる瞬間。

アレンは、布団の中で小さく拳を握る。

(父ちゃん、かっこいい)

それだけ考えて、

そのまま眠ってしまった。

三百人の村は、

今日も無事だった。

でもアレンは知らない。

この規模の村が、

いつも守り切れるわけじゃない

ということを。

今はただ、

戦える大人たちがいることが、

少しだけ誇らしかった。



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