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生徒会はタイマンらしい

第20話



薬草採取は、思ったより順調だった。

「これで合ってる?」

「うん、葉の裏が白いやつ」

授業で習った通りの見た目。

森の食べ物も、いくつか見つかった。

「意外と、覚えてるもんだな」。

「座学も役に立つんだね」

班の袋は、そこそこ重くなっている。

初日としては、上出来だ。

「じゃ、戻ろっか」

最後尾から、やる気のない声。

リーナだった。

森を抜け、テントのある広場へ戻る途中――

アレンの足が、止まった。

「……一匹」

前方。

低い唸り声。

草の向こうから、姿を現したのは

角の生えた犬型の魔物だった。

最低ランク。

一匹だけ。

それを見た瞬間、

班の空気が、一気に固まる。

「……またかよ」

誰かが呟く。

すると、後ろから

信じられない一言が飛んできた。

「生徒会の人間はさー」

リーナだった。

「一匹だったら、一人で倒さなきゃダメなんだよね」

「…………は?」

全員が、同時に振り返った。

「いや、絶対嘘ですよね?」

「聞いたことないんだけど」

「そんな決まり、ないだろ」

「ないない」

全員の顔に

『絶対に嘘』

と書いてあった。


アレンは、前を見た。

魔物は、こちらを警戒しながら

じりじり距離を詰めてくる。

(……仕方ない)

逃げる距離じゃない。

班を動かすと、逆に危ない。

「俺がやる」

自然に、そう言っていた。

「え?」

「お、おい!」

止める声を背に、前に出る。

剣を構える。

――一年ぶりだ。

怖くはない。

手も、震えていない。

魔物の動きが、

はっきり見える。

後ろ脚。

前脚。

肩の筋肉。

(……跳ぶ)

次の瞬間、

魔物が飛びかかってきた。

アレンは、わざと後ろに躓いた。

「えっ――!」

誰かの声。

体勢を崩しながら、

剣だけを前に出す。

狙いは――胴。

ドンッ。

鈍い衝撃。

魔物の勢いが、そのまま剣に乗った。

ズルリ、と

剣が胴体を突き抜ける。

地面に、重い音。

魔物は、ぴくりとも動かなかった。

沈黙。

「…………え?」

「……終わった?」

アレンは、剣を引き抜き、深く息を吐いた。

「運が良かったよ」

足元を確認する。

噛まれていない。

傷もない。

後ろから、視線を感じた。

振り返ると――

リーナが、じっとこちらを見ていた。

表情は、読めない。

「……ふーん」

それだけ。

何も言わない。

何も評価しない。

「じゃ、帰ろっか」

「日も暮れるし」

いつも通りだった。

テントに戻ると、

班員たちは一気に力が抜けた。

「……生きてる」

「もう動けない」


「さっきの、すげぇな」

「たまたま」

アレンは、そう答えた。

嘘ではない。

条件が、揃っただけだ。

夜。

焚き火の音。

一日目が、終わる。

アレンは、寝袋に入りながら思った。

(……勘、鈍ってないな)

一年ぶりの戦闘。

問題なし。

ただ――

最後尾から向けられた視線だけが、

少し気になっていた。

やる気のない非常勤教師は、

きっと全部、見ていた。

そう思いながら、

アレンは目を閉じた。

野外訓練、一日目終了。


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