幸せの最後
掲載日:2025/12/23
私は幸せだった。
何をしてもうまくいかず、醜くて、いちばん嫌いだった自分を、
それでも好きだと言ってくれる人がいることを知れた。
少なくとも今は、この光景を君と見ることができている。
君がここに立ち、何も言わずに私を見送っているという事実だけで、
私には十分だった。
多くの人にとっては、ここへ辿り着くまでの道は、
決して幸せとは呼べないものだったのだろう。
私が歩いたあとには山ができ、川が流れた。
その下には、名前を持たない人間がいる。
それは歴史となり、意味を与えられた。
だが、意味が与えられたからといって、正しかったわけではない。
それでも――
君が生きていける世界を、ほんの少しでも残せたのなら。
私にとっては、これが
幸せの最後だったのだ。
お読みいただきありがとうございました。




