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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第一章 プロト村 幼少期編
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第8話 「瑠璃色の瞳」


あれから1日かけて魔法の練習を続けたが、何も成果は出なかった。

気づけばイリアンは甲虫を自在に操れるようになっていて、今は数を増やす練習をしている。



彼はやはり天才だと確信する反面、自分の力不足が悲しく思えてしまう。

「なぁ、そろそろ帰っていいか?本当に1日何も食べずに終わりそうなんだけど」


「…あ、うん。ごめん付き合わせて…」

文句を言ってはいたが、なんだかんだ最後まで付き合ってくれた彼に感謝はしている。



「まぁ、また練習付き合ってやるよ」

「ありがと…」

「よーし!明日は気持ち切り替えて仕事するぞ!」

「イリアンからそんな言葉出てくるなんて…(笑)」

「む、失礼な。俺は天才の仕事大好き人間だぞ。」


きっと彼なりの励ましなのだろう。ずっと一緒にいたから、何となく分かる。


「フェリス!」


突然、名前を呼ばれた。

でもこの声は知っている。


「あ、お母さん!」


母が手を振り、呼びかけてきていた。

「ここにいたのね。中々帰ってこないから…」

「ごめんなさい…」

「ごめんおばさん、俺が練習に付き合わせてたんだ。」

「いや、これは私が…」

「ごめんなフェリス!また明日!」


弁明の余地無く、イリアンは走って帰ってしまった。


「違うの。私が魔法の使い方を教えてって無理やり連れてきたのに…」

「でも、イリアンはフェリスを庇ってくれたのね。」

「うん、ごめんなさい。」

何かを察した表情を見せる母。

そしてその表情に曇りを見せ、少し躊躇いながら口を開いた。




「……フェリスがあのドラゴンを私と担当することが決まったの。」


「え…?」


ドラゴンの…お世話?


「本当はオオツメドリとかの担当を任せようとしていたのだけど、ついさっき村長との話し合いで決まったわ。」 


「ち、ちょっと待って……」

「そして今の村長の厩舎のお世話も併用すること。」


「併用って…」


「出来る?」

どこか強い視線を向けてくる。まるで拒否してほしいと願っているかのような。


「まだ、貴方は10歳…本当ならこんな事は…」


「……わかった、がんばる。」


「え?」

私は獣医師になると決めた。

早くから経験を積めばきっと母のような獣医師になれる。

魔法と同じように…

「私にあのドラゴンのこと、教えてください」

「フェリス...」


どうしてだろう?

一瞬、母の目に涙が浮かんだような気がした。


「…わかったわ。明日から始めましょう。」

「うん!!」

「渡した耳飾り、必ず着けてくるのよ。」

「はい!!」


雪の降る雪原の中、母と並んで帰路につく。


明日から母と仕事ができるんだ。そう思うと胸の高鳴りが大きくなってくる。

その隣で、母が悲しげな表情をしていたことを私は気づくことはなかった。



翌日…



午前中はケガワウシの世話をし、午後から母と共にあの厩舎で仕事をすることになった。


「あとは任せろ。フェリスがいなくても世話なんかできるからよ」

午後からの世話はイリアンが一人で担当することになったのだが、あの一件から彼は真面目に仕事もしている。きっと大丈夫だろう。

村長の厩舎を後にし、私は母の待つ厩舎へ向かう。

雪道を歩き、松明の並ぶ洞窟を進んでいく。


少しずつ、緊張が歩みを阻もうとしてきた気がするが、あの氷檻の目の前まで一人で来ることができた。

薄暗くて檻の中は見えない。

天井からかすかに差し込む斜陽を頼りに、檻の中に視線を向けていると、


「フェリス」


背後から母に呼ばれた。

「耳飾り、ちゃんと着けてるわね」

「うん…」

どうしてこの耳飾りのことをこんなにも気にしているのだろうか。

不思議に思ったが、それはすぐに頭の中から離れていった。


ガッシャーーーーーン!!


突然、檻が大きく軋むような音が鳴り響いた。

「きゃあっ?!」


驚いて振り返ると、瑠璃色の鱗を纏い、吸い込まれそうなほど美しい瑠璃の大きな瞳がこちらを睨んでいた。


「あ…」

腰が抜けてしまった。

私とほぼ同じ背丈の大きさの瞳だ。


体中の細胞が言っている。

その瞳から目を背けてはいけないと。


低く唸る声が耳を通して脳に響き渡ってくる。



「フェリス、ここでは行動一つ一つに責任が伴うわ」


背後で母が聞いたことのない声色で叱責してきた。


「立ちなさい、フェリス」


「あ……あぁ…」

間近で見て痛感した。

生半可な気持ちではダメだと。

でも足が震えている。まるで立つなと身体が言っているかのように。


初めて、殺気というのを全身で感じた。


「不安を感じさせてはダメ、この子は感情を読み取る事が出来る。」


その言葉を聞いて、私は震える足に鞭を打って強引に立たせた。


その姿を視界一杯に入れる。


15m程の体格に、蒼く輝く瑠璃色の鱗。

宝石のように透き通る2本の角。

大きな腕からは翼の役割をしているだろう翼膜。


その瑠璃色の瞳ははっきりと私を捉えていた。


一目見ればなんて美しいのだろうかと感じる。 だがその感情を抑え込むかの如く、恐怖がのし掛かってきた。


「ひっ...!?」


キュル"ア"ァ"ァ"ァ"ァァァァァァァッ!!


「フェリス危ないッ!!」


次の瞬間、ドラゴンが牙を向き、恐怖で動けなくなった私に襲いかかってきた。




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