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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第51話 「罪人」


「まだ来ないか…」


夜、教会の広間でしばらく待ってはいたけれど、来る気配はない…

ハーデリアンさんに伝言の紙を渡し、それがフェリスまで届いているのか…まだフェリスが目覚めていないのか…


とにかく不安に駆られてしまう…


「様子見に行こうかな…でも…」


今ここを離れると、教皇様からの指示に背くことに…

これ以上、怪しい動きを見せる訳にも…


「マテリア」


「お爺様…私、フェリスの様子を見に行きたい。」


「今からか?」

「お願い、お爺様…」

「…分かった。くれぐれも気を付けていくんだよ」

「気を付けてって…私はこの王都所有軍の一隊長よ。」

「いつまでも、おまえは私にとっては孫のままだ。」

「あっそう…じゃあ行ってくる…」


教会の入口が騒がしくなってきた。


教会を出ると複数人の衛兵と出会した。


「マテリア隊長!」

私を見た衛兵達が、敬礼を向けてくる。

「他の部隊の…どうした?」


「教皇様の御指示の下、この罪人を一時的に教会の地下牢に投獄せよとのことで伺いました。」

その中心に、荷車に乗せられている大きな麻袋が見えた。おそらく、中にその罪人がいるのだろう…




「……ご苦労様。」



それだけ告げて、私は見て見ぬふりをしてその場を離れた。



ここはいつから罪人用の施設になったんだろうか…

教会は、沢山の人の幸せを願えるような、そんな場所だったんじゃないのか…




「ここで間違いないな。」


衛兵が一人、先導して中に入ってきた。

「教皇様の御指示の元、罪人を連れてきた。エヴァンス殿、牢への案内を頼む」


「罪人?かしこまりました。こちらへ…」


その地下へと続く階段を降りている最中だった。


「マテリア隊長はどこへ行かれたので?今夜はここで待機命令が出ていたと伺ってますが…」


「マテリアは急用で一時的に外出しております。」


「ほぉ、その急用とは?」


一人の衛兵が目も合わさず確認を取ってくる。

どこか不自然な様子も感じたが、とにかく牢へ…


「さて、内容の確認をしていられないほど急いでいたようで、何も告げず出ていってしまいました。」


「そうですか」


地下牢の前を通ると、元気になった獣の鳴き声や威嚇が響き渡っていた。


「ここが、人間用の牢です。」


「…そうか」


突然、鈍器のような物で頭を殴られ、意識が遠退いていく。


「ぐっ…?!」


最後に視界に入ってきたのは、衛兵がもう一度振りかぶった鈍器だった。










「え?もう教会に向かっていたのですか?」


「あぁ、ついさっきだよ」


どこかで入れ違ってしまった。

ハーデリアンさんのご自宅まで来たが、もう一度戻って確認しよう…


「そうですか…ハーデリアンさん、遅くに失礼しました」

「いやいや、フェリスちゃんに会ったらよろしく頼むよ」


どこに行ったのだろうか。

ここから教会までの道は今来たところが最短。

夜のうちであれば、ここを通ると思っていたのだけれど…



「……」


嫌な予感がした。

早く教会へ戻らなければいけない気がしたのだ。



思えば、あの衛兵達が教会を訪れた時から何かがおかしかった。

普通なら、教皇の指示であれば事前に通達が来て動くはず…

それに教皇はフェリスを探していたって…


「あの麻袋…まさか…」


さっき、教会を離れなければ良かった…

いや、そんな後悔している時間があるなら足を動かすんだ。


教会の扉が開いているのが見え、嫌な汗が出てくるのを感じた。


「お爺様…?」


広間を見ると、地下牢への階段から黒い煙が薄く漂い漂い始めているのが目に入った。


急いで階段を降りていくが、その黒煙がどんどん濃くなり呼吸がしづらくなる。


「息が苦しい…」


一度戻って体制を立て直すか…?

状況を共有して私の部下達を連れて来るべきか…?





「いや………フォルテさんだったら…」





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