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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第49話 「過ち」



振り返ると、そこには衛兵を引き連れた教皇が立っていた。


「…教皇様、なぜここに…ぐっ…!?」


突然、背後から羽交い締めにされ、首元にナイフを突き付けられた。


「貴方の計画は終わりよ…!」


「ほぉ…どこから嗅ぎ付けた、まさかエヴァンスおまえが…」


「この人は、私が脅してここまで案内させたわ。」


「…?!」

「人質というわけか」


「獣達の人造化なんて…倫理に反した愚かな行為よ…」


「愚かだと…一体どの口が言っている」

「何が言いたいの?」

「その昔、貴様ら"ノアの一族"が何をしたのか知らぬわけではあるまいな?」


ノアの一族が犯した過ち…

大陸戦争を引き起こし、世界を滅亡寸前まで追いやった呪いの一族…


「獣を使役化し、争いを生んだのはおまえ達ではないか!」

「……」


「黙っていないで何か反論してみよ。でなければ認めたも同然…」





「獣は…哀れだわ…」





「何が言いたい?」


「昔も…そして今も人の都合に巻き込まれて死に絶えゆく…その命は誰の物でもないのに…!」


「その過ちを犯したのはおまえ達もだろう!」


「だから過ちを正す為に私はここに来た!全ての命を守るために!」




「……人造化した獣であれば、生殖能力は無いが遺伝子を使えば大量に生産が可能だ。そうすれば、兵士達を失わずに済むであろう。」


「その為に罪の無い獣達を犠牲にするなんて…そもそも戦争なんてなければ…」 


「分かり合えない事もあるのだ。武力で理解させる事も必要なのだよ。衛兵、この女を国家反逆罪で捕縛せよ。」


「近付かないで。さもないと…」


冷たいナイフと震えが共に喉に当たる感触がする。


「殺れる訳なかろう、捕らえよ。」

衛兵達がその指示を聞き、歩みを止めずにこの方を取り押さえていった。


「くっ…!離して…!」


「大丈夫か、エヴァンス」

「は、はい教皇様…お手を煩わせてしまい申し訳ありません…」

「良い、おまえが無事で何よりだ。女、良いことを教えておこう。もう既に各大陸に人造種を送り込んでおる。」


「なっ…!?」


「教皇様、それは本当なんですか……?」


「嘘などつかぬ。あとは私の一声を上げれば、次期に殲滅が始まるであろう。」


「遅かった…」


「ここまで来て、残念よのう…」


「………いや…まだ…」



辺り一帯に冷気が漂い始めた。

その発生源は…


「貴様、何をしている…?」


今まで感じたことのない…

魔力とは違う何か魔を超越するような力が大気を凍らせ、そして震わせている。


「急ぎこの女を眠らせ、拘束せよ!!」


教皇の慌てようから、衛兵達の間にも動揺が走っていた。


だが、その方は微塵も慌てる様子もなく、鉄格子に囚われていた一匹のヴァンパイアキュアに視線を向けていた。


「お願い…この事を村に伝えて…」



何か言葉を発したかと思えば、そのヴァンパイアキュアは突然飛び上がり、地下牢を飛び出していった。


「何をしたっ?!言えっ!!」


身体から冷気を流し、何か力を蓄えている様子…それを見て、唯一教皇だけが焦っているように見えた。


「まさか……?!何をしている衛兵っ!!早く眠らせろっ!!」 


一人の衛兵が注射器のような物を首に打ち付け、液体を流し込んでいく。


「そうはさせんぞ…貴様の娘を捕らえてここに連行する。さすればその力を解放することはできまい…」









「その後、その女性はしばらくここで監禁され、その力が解放されぬよう身柄を拘束されていた…」


通路をさらに奥まで進んでいくと、エヴァンスさんの視線の先に、人間用の枷が吊るされた牢屋があった。


「まさか、ここに…お母さんが…」


枷に触れると、冷たい血がべっとりと付着していた。

「二人は知っていたんですか…ここにいた母の事を…」


「いや、マテリアはここまで来たことはない。わしだけが…」

「しばらくって…今どこに…?」


間髪入れずに問いただす。


じゃないと…


正気を保つことが…出来ない…



どうしてお母さんはここの獣の事を知っていたのか…いつから人造種計画を知っていたのか…



ダメ…何も…分からなくなってきた…



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