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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第47話 「治癒」


「はぁ…はぁっ…っ!」


息が苦しい…

もうどれくらい時間が過ぎたのだろうか…

すでに数十頭に治癒魔法を使い、身体の力が抜けて頭がボーッとする…


「まだまだ…」

目の前に横たわる獣に手をかざし、力を込めると耳飾りが淡く青く輝く。だが、最初に比べてその輝きが弱くなっているように感じる。

「フェリス鼻血が…一度休んだ方が…」

「大丈夫…あと少しだから…」


どれだけの時が過ぎたかは分からない。体感による時間の流れももう当てにならない。

それだけ、目の前の獣達の治療に集中していたのだから。


「この子は…確かヴァンパイアキュア…だったかな…」


コウモリのような見た目の獣が4匹程身を寄せていた。図鑑で見た通りであれば、本来は常に飛行しているか止まり木に止まって休息をするはずだが、その黒い小さな翼を力無く床に垂れ伏せ、こちらを必死に威嚇していた。


「大丈夫…すぐになんとかするから…」

「フェリス、次で最後の子だよ」

「分かった…あ…」


一際大きな鉄格子。その中で動いている大きな影。


見覚えがあった。


「貴方は…」


白い大きな翼をたたんで、こちらをその鋭い目で睨み付けている。まだ余力があるのか、それともそう見せているだけか…


「グリフォン…」

「気をつけてフェリス、この子はまだ体力も残っているだろうし、そもそも人に懐くことのない、慕うこともない希少種よ」


この世界においての希少種…

それはまず人目に触れることのない環境下で生き、その姿を見た者などほとんどいないと言われる種だ。

その生態においてもほとんど謎に包まれていているから食性も不明の為、人の飼育下で長く生き永らえる事はまず不可能…


「この子の怪我はどこに?」

「右前足のはずよ。私が深く切ってしまっているから…」


鉄格子の扉をゆっくりと開けるが、その開閉音で小さく威嚇し始めた。

一瞬迷いが生じたが、こちらが不安な様子を見せては獣にも感じ取られより不利になってしまう。


「大丈夫…大丈夫だよ…」


優しく、静かに声をかけながら近づく。

決して目を逸らさぬように…

ローブから手を出し、その右足に触れようとしたその瞬間…


「フェリス危ないっ!!!」


グリフォンがその鋭い爪を振り上げた。


「うぐっ…!!!」

後ろに仰け反ったが差し出していた左手にその爪を受けてしまった。


自身の血がボタボタと冷たい床に垂れるのを見たが、その目から逸らすことは絶対にしなかった。


「フェリス一旦下がった方が…!」

「ダメっ…!今下がったらこの子は私に絶対的な敵対心を持ってしまう…!!」


目を逸らさぬよう、血が流れるのも構わず静かに立ち上がる。


「ごめんね…びっくりさせちゃったよね…」


狭い空間で羽ばたかせようとして、壁に翼を打ち付けてしまっている。

無闇に近付くのは無謀だ…それでも…


「私は敵じゃない、貴方の味方だよ。」



フードをゆっくりと外し、ローブを脱ぎおろす。ローブの中にあったナイフが音をたてないよう静かに床に置く。

この王都に来て、初めてフードもローブも外した。


「ほら、大丈夫だよ」


私の姿を見て、グリフォンが威嚇するのをやめていた。

目を逸らさぬよう、ゆっくりともう一度歩み寄っていく。


「貴方を助けたい。ただそれだけなの」


私の青い瞳からグリフォンは決して目を逸らそうとしなかった。まるで私の考えを汲み取っているかのように…


右足に触れる距離まで詰めて、流血している腕を伸ばす。


激痛が腕から流れ込んでくるが、目を閉じて力を込めた。


弱々しかった耳飾りの光は、最後の力を振り絞るかのようにもう一度強い力を放った。

グリフォンの傷が塞がっていくのを見て、徐々に力を抜いていく。


「はぁ…はぁ…もう大丈夫だよ…」


ふと見上げると、敵意の無い瞳で私を見つめるグリフォンがいた。


「良かった…」


ゆっくりと立ち上がりその場を離れていくが、グリフォンはその瞳で私の事を追ってきていた。


鉄格子から出ると、マテリアとエヴァンスさんがそこに立っていた。


「あ…」


今の自分の姿を思い出した…青い髪と青い瞳を見られてしまった…

呪われた一族の象徴を…


「フェリス…貴方…」

「これは…」


また、罵声を浴びせられてしまう…そう思った…



「グリフォンの治療をしてしまうなんて…」

「え?」

「ごめんね、半信半疑だったから…希少種の治療なんて前代未聞で…」

「そ、そうなんだ…」

「本当にありがとう…フェリス…」


隣にいたエヴァンスさんも優しげな表情をしている。


「ねぇマテリア、これからこの子達をどうするの?」


「うん、ここまで動けるようになっていたのなら、この先にある地下通用口を通って外まで…」


ガチャンっ…


遠くから鉄格子の扉が開く音が聞こえた。


「どこかの扉が開いた…?」

「いやこれは…」

「まずいな…お戻りになられたのかもしれぬ…」


足音がゆっくりと近付いてきている。


「いかん…私達以外の人間がここにいるのを見られてしまえば極刑になるぞ…!」

「フェリス、隠れて!」

「か、隠れるってどこに…!」






「おや…これはこれは…」






「お、お帰りなさいませ…」


「マテリアではないか、なぜここに?」


「えっと、この子達の様子を見に…」





「そうか。エヴァンスよ、フォルテへの伝言ご苦労だった。無事にあの村から運び込めることが出来たぞ。」




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