第45話 「禁忌」
「早速で申し訳ないのですがフェリス、貴女にお願いがあります。」
礼儀作法も分からぬまま、一通りの自己紹介を終えて女王は話を進めた。
「は、はい…」
「今、この王都で進んでいる計画についてですが…」
その内容はとても信じがたく、理解するまでに時間がかかった…いや、理解できる内容ではなかった。
まさか、そんな禁忌を犯そうとしているだな
「今ここに当事者は不在なので、マテリアと向かい急ぎ治癒をお願いしたいのです。このままでは…」
「そんな酷い事を…あの人が……」
初めて他者にここまでの嫌悪感を抱いた。
「…わかりました。まずはその子達に会わせていただけないでしょうか?」
同時に、私にしか出来ない事だと…
助けられるのは私しかいないと悟った。
「ありがとうございます。ではマテリア、案内を。今日の夕刻にあの者が戻る予定のはず。私は少しでも時間を稼ぎます。」
「感謝いたします。行こう、フェリス。」
「うん」
ーーー王都 教会にてーーー
まさかここでそんな事をしていたなんて…
教会は皆が幸せになれるよう神様にお祈りしてる所だとおばさんが言っていた。
幸せって何……
教会の扉を開け広間に出ると、見覚えのある人が立っていた。
「おや?貴女は確か…」
白い髭を蓄えたこの教会書庫の司書…
「エヴァンスさん…」
言葉に詰まってしまい、黙り込んでしまうと隣にいたマテリアが代わりに口を開いてくれた。
「獣達の様子を見に来たわ。通してほしいの。」
「通す…」
怪訝そうな表情を浮かべながら、エヴァンスさんはゆっくりと私に視線を向けてくる。
疑惑と不安を感じさせる目だった。
「マテリア…それはいくらなんでも…」
「これは女王陛下の御命令よ、お爺様。」
………お爺様?
「マテリア今なんて……」
「ん?女王陛下の御命令よって…」
「いやその後…」
「フェリスさん、マテリアはわしの孫じゃよ。わしに似ず綺麗な子じゃろ。」
「そうだったんですか…」
「やめてよお爺様。昨日話したでしょ。それがこのフェリスよ。」
「そうか……ではその御方があの子達を救いだしてくれるということか…」
視線を私から逸らし、あの鉄格子の扉を見ていた。
やっぱりあそこにいるんだ…
「わしについてきてくれ」
エヴァンスさんが白いローブを翻し、鉄格子へと向かっていく。
「行こうフェリス。」
ゆっくりと鉄格子が近づいてくるにつれ、鼓動が早くのを感じる。
それと同時に母から譲り受けた耳飾りから力を感じた。
「お母さん…」
母ならきっと、この先の惨劇を救えと言うはず。
決意を固め、鉄格子の先にある位地下へ続く階段を下りていった。
「ほんとはね、お爺様は本当の祖父ではないの。」
何か想いがあったのか階段を下りながら、マテリアは語り始めた。
「どういうこと?」
カツカツと階段を踏み鳴らす音が響く中で、彼女の返事を待っているが、何か考え込んでいるようだ。
「マテリアはな、教会の前でこの子がまた赤子だった時にわしが拾った捨て子じゃった。」
「え?」
「そう、本当の両親の顔なんて知らなかった。だからお爺様だけが私の親で、心を許せる人だった。」
「あれは、何でもないただの1日の始まりじゃった…」
ーーー18年前ーーー
その日もいつものように書庫の本を整え、カーテンを開けて陽の光を入れていた時だった。
オギャーーッ!!!オギャーーッ!!!
「ん?赤子か?」
教会を開ける前であったが、赤子を連れた者が懺悔に来たのかと扉に向かった。
だがそこにいたのは、カゴの中で毛布にくるまれた独りの赤子。その赤子の上に丁寧な文字で『マテリア』とそう綴られた紙が1枚あるだけ。
「捨て子か…可哀想に…」
わしは親を呼ぼうと泣き叫ぶその赤子をゆっくりと抱き上げ、教会へ入っていった。
教会という場である以上、このような赤子を引き取る事はしておった。手続きを踏まえて、最善の道をその両親と相談しながらその子の未来を考えた上であったが…
マテリアは、ただ物を置いておくかのように…




