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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第43話 「頼み」


「フェリスさん、ここ座って?」

「ありがとう…」


路地裏を通り、人目のつかない場所のベンチに座らせてもらった。


故郷の味を思い出してしまったのだろう。気持ちが緩んで涙が出てしまったのだと思う。心を落ち着かせ、顔を上げると…


「あ...」


この目の前に広がる光景には見覚えがあった。


初めてこの王都に降り立って、不安に駆られる中見た夜景の見える崖沿いの道だった。


「どう?落ち着いた?」


「うん…ここ、とても綺麗…」


「でしょ?私のお気に入りの場所なんだ。何か嫌なこととかあったらここに来てこの景色に慰めてもらってるの」


「そうなんだ」


「良いところなんだけど、最近は指名手配者が彷徨いてるって言われて物騒になっちゃって」


初日に襲ってきたあの人達か…


「でも、それ確かフォルテさんが捕まえたって…」

「そう!そうなの!本当にスゴい人だよね!」


やっぱりフォルテさんの事を話している時のマテリアさんは可愛らしい。


「あの、なんていうか…マテリアさんって別人みたいというか…」

「ん?なにが?」

「昨日会ったマテリアさんと、今のマテリアさん」

「あぁ~…良く言われる…」

「ごめんなさい...!悪く言ったつもりじゃ…!」

「大丈夫分かってるよ(笑) 仕事とプライベートのオンオフは付けてるだけだから!だって王都の一兵団を任せられてるのにこんなんじゃ信頼されないでしょ?」


これが本当に私と3つしか違いないのだろうか…

とてもあと3年で私が彼女のようになれる自信なんて沸いてこない…



「すごいね…マテリアさんって…」

「ねぇ、私も質問してもいいかな?」

「うん?」

「フェリスさんはどんな治癒魔法を使えるの?」


「どんなって…」


「治癒魔法を使っても、私達人間程の大きさの生物の治療には数日はかかるはずなの。自然治癒に比べれば早く治るけれども…それをフェリスさんは数秒で私の仲間の傷を完治させた…どういう治癒魔法なのか教えて欲しいの」


「えっと…」


昨日の見た光景が、昔聞かされた母の言葉と共に蘇る。






ーーー昨日、グリフォン襲撃の騒動後ーーー


「こりゃひどい有り様だね…」


おばさんの後を追いながら、大通りを歩いているとどこを見ても負傷した兵士達が倒れて動けなくなっていた。


グリフォンとはいえ、たった一頭の獣によってここまでの被害がでるなんて…

人間の弱さを見せつけられ、獣の強さを思い知らされた。


辺りから兵士達の苦しむ声が鳴り止まず、眼を当てる事も出来なかった。



昔、母と交わした約束…



この力を他の人に見せることはダメだと言われたけれど、きっと母は助けを求める人を見捨てる方が咎めてくるだろう。



「………」


私はその場で立ち止まり、何かは分からないが心に決めた。


「フェリスちゃん?」


「おばさん、ちょっと待っててください」


おばさんの手から離れ、フードが外れないように負傷兵の元へ向かった。


その歩みに迷いなど微塵もなかった。力を込め、一人一人に蒼く淡い光を当てていく。


多分、その兵士達からは困惑と感謝の声が聞こえていたと思う。


けれど、私はただ目の前しか見ていなかった。





「ごめんなさいマテリアさん…それは分からない…いつの頃からか、突然この治癒の力が使えるようになって…」


「………」


「助けたいと思った気持ちは本当なの…それだけは言える…」


「………ふふっ、そっか(笑)」


きっと怪しまれるのだろうと思ったけれど、彼女は無邪気に笑いかけてくれた。


「確かに、その思いに嘘は無いね。目を見れば分かる。」


王都に来てからあまりこの容姿を見られないようにしていたけれど、マテリアさんにはいつの間にか心を許していた。


「フェリスさん本当に綺麗な瞳をしてるんだね」


「マテリアさんの方が綺麗だよ…」


「もうさ、お互いさん付けするのやめよっか!」

「え?」

「よろしくねフェリス!」

「う、うん…!マテリア…!」



「なんかまだぎこちないな…」

「そ、そうかな…?」


その後、他愛もない話をしながら夕日が地平線に沈みかけていくのを眺めている時だった。



「フェリス…貴方にお願いがあって…」

「お願い?」


「貴方のその力で治療してほしい獣達がいるの」

「獣?」

「昨日、フェリスも見たよね?この王都へ連れてきた獣達…」


「うん…まさかその子達の?」


「その子達だけじゃない。過去にも強引に連れてきてしまって傷ついている獣達がいる…助けてほしい…」


この力を使う事を母は許す事は無い。でも傷ついた獣がいるのなら、その身を削ってでも助け事を咎められないはず…




「分かった、任せて。」



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