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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編

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第42話 「友人」


朝日が昇り、王都を陽光が照らす。


噴水の前で私はフードを被りマテリアさんを待っていた。

母の安否も分からない中、こんなことをしている訳には行かないと思ったが、もしかしたら情報が聞けるかもしれないと昨夜のお誘いを受けてしまった。


ラズリと別れてから2日が過ぎたけど、大丈夫だろうか…


おそらくあの子なら大丈夫だと信じているが、やはり不安が降り積もってくる。


早く母を見つけないと…


「フェリスさーん!」


マテリアさんが来たのだろう。声がする方へ視線を向けた。


「マテリア…さん…?」


駆け寄ってきたのは白いワンピースに小さな鞄を持ったマテリアさんだった。


「すみません、準備に時間がかかっちゃって…」


「……」


昨日見た黒い甲冑のイメージが強かったせいか、そのイメージを覆す程清楚で綺麗が似合う容姿に同性ながら思わず見惚れてしまった。



「あれ、もしかして変でした…?」


ワンピースの裾を持ち、自身を見ている仕草がとても可愛らしい。


「え?あ、いやそんなことないです…とても綺麗でつい見惚れてしまって…///」


「ふふっ…ありがとうございます!じゃあ行きましょうか!」


隣に並んで歩くが、綺麗なブラウンの髪からどこか良い香りがして緊張してしまう。


そう思って周りを見ると、おばさんを除いて王都の女性は皆容姿を整えている気がしてきた。


それに比べて私ってあんまり女としての魅力って無いのかも…


少なくともマテリアさんといるとそう思わざるを得なかった。


「どこか行きたい所はある?」

「え?えっと…」


「もし、フェリスさんが行きたいところがなければ、私の行きたいところに行ってもいいかな?」


「は、はい…お願いします!」


「お願いしますって(笑)フェリスさん堅いよ(笑)」


「そ、そうですか…?」


「じゃあ市場にある装飾店で欲しいのがあるからそこまで行くね!」


言われるがまま彼女に付いて行き大きな通りに出ると、色々な出店が立ち並び活気に溢れていた。


昨日おばさんと来た所とはまた別の通りだったが、ここも負けじと人で賑わいでいる。


「あそこ!黒い屋根の出店だよ!」


指差す方を見ると、黒い屋根の下に鮮やかな宝石を象った装飾品が並んでいた。


「綺麗……」


「あらマテリアちゃん、いつも来てくれてありがとうね」


店主が話しかけてきているが、どうやら気付いてない様子。


「フォルテさんを振り向かせるならやっぱりこのサファイア…いや敢えてのトパーズで明るく…」


ふと隣を見れば、呪文のように何やらぶつぶつと一人で呟いている…


「フォルテさんへのプレゼントですか?」


「ううん、フォルテさんに振り向いてもらえるように自分磨き用。」

「そ、そうですか…」


「フェリスさんは何か買う?」

「私はいいかな…」


「そう?じゃあ折角だし記念に何かプレゼントするよ!」

「え?そんな悪いです…」


「いいからいいから!何か気になる物はあった?」


「ん~…」


実はここに来てから一際目に付くものはあった。

この青い宝石が埋め込まれている銀の指輪。

「これかい?こいつはラピスラズリを埋め込んだシルバーリングさ。なんでも昔いたとされる幸福を呼ぶドラゴンの落とした宝石と言われてるよ。」


「幸福を呼ぶドラゴン…」


「まぁただの昔話だけどね。本当はここから東にある炭鉱で見つかった宝石を使ってるのさ。」


店主は大きく笑いながらその指輪を見せてくれた。


「じゃあこれで…」

「これくださいな!」


「はい毎度ありがとう~」


「じゃあ改めて、これどうぞ!」

「ありがとうございます…」


母から貰った耳飾りと同じ宝石…


右手の中指に指輪をはめて朝日に照らすと、淡く青い光が反射していた。


とても綺麗だ…


「じゃあ次行こっか!」


その後もマテリアさんは色々な行きつけの店に連れていってくれた。


思えば、年齢の近い同性の人と一緒に過ごす事って今までなかった…


アスカさんとは出掛けるとまではいかなかったけど、きっとこれが友人と出かけて、遊んでということなんだろう…


しばらくして歩き回り、太陽が真上に位置した頃。


「フェリスさんお腹とか空いてない?この先に美味しいパンの店があるんだけど寄ってもいいかな?」


「うん…!」


マテリアさんの人柄もあってか、勝手に作ってしまっていた壁はすっかり無くなっていた。


「こっちこっち!」


微笑みながら私の手を引くその仕草が、どうしても昨日見た人と同一人物と思えない。


「どれにする?」

「えっと…おすすめは…?」

「私はいつもこのパンを食べてるよ!ケガワウシから取れたバターが練り込まれてて凄く美味しいんだよ!」




「ケガワウシ…」





ということは私の故郷で作られた食材を使った物…


手渡されたそのパンをちぎって口に入れると、知っている味が口に広がった。


「……」

「あれ…いまいちだった?」

「ううん…凄く美味しい……」

「フェリスさん、どうしたの…?」

「え?」




気が付くと、涙が溢れていた。




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