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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編
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第38話 「献上」



「大変、申し訳ありませんでした…」


大勢の民衆の眼前でマテリアは頭を垂れ精一杯の謝罪をしていた。



「全く…その早とちりはおまえの昔からの悪い癖だよ。隊長にも選ばれているんだ、いい加減直しな。」

「心得ております…フェリスさん、大変申し訳ありませんでした…」


「いえ私は別に…」

目の前で縮こまる姿を見て少し呆気にとられてしまった。


第一印象と見た目からは想像出来なかった姿だったが、年相応の姿というか…どこか安心した自分がいた。


「では、私はこれで失礼します」


もう一度深々と頭を下げると、マテリアはまた行進の先頭へと戻っていった。



「あの娘は昔からああでね。うちのバカ息子を慕ってくれているんだが、これがまた度合いが…」


先程までの姿とは全くの別人のように凛々しく行進の先頭へと戻っていく黒い鎧のマテリア。


雰囲気からこの人がいれば大丈夫だと思わせてくれる。


「あの、マテリアさん達は王都の外へ何をしに行っていたのですか?」


「今回の遠征はセレニス大陸との外交と聞いているよ。基本的にマテリアが出征する時は他の大陸や国との外交がほとんどさ」


外交でこの大勢の軍隊が必要なのか…


「ちなみに、うちの息子が出向く際は戦争を仕掛けに行くことが多いよ。次に出征するのもそれが目的だ…」


「戦争……」


あまり良い響きでは無いのは分かる。

あのおばさんの表情が曇っているのを見て自然とそう感じた。


「まぁあの子は単細胞だから、性に合っているんだろう。それに比べてマテリアの扱う魔法は外交に優位になれるし、話術も優れているからね。外交を任せられる人材と言われているんだ。」


「外交に優位になれる魔法って?」


「あぁ、すぐに分かるさ」


おばさんが行進する軍隊の後方に目を向けている。その視線を辿ってみると、言葉を失ってしまった。


「え…」


そこには頑丈そうな檻に入れられ、自由を奪われている小さな獣の姿。


それも一匹ではない。


その後列に続いて、何台もの檻に閉じ込められている獣が馬車に引かれてきていたのだ。


「おばさんあれは一体…」


檻に閉じ込められている獣は初めて見た訳ではない。

村で氷檻に入れて管理をしていたドラゴンは見てきたから。


ただ信じられなかったのは、その閉じ込められている獣達の身体は鎖で繋がれ、身動きを封じられている。




まるで強引に抑え込んでいるかのように…





「あれは、王への献上に捕獲された獣達だ。」



「献上って…あの子達は生きているんですよね?!命を持った獣ですよね?!」

「あぁ、そうさ」


まるで冷静を装うかのような一言の返答で言葉が詰まってしまった。

次々と運び込まれてくる檻の馬車。その中には前にラズリと海を見に行った時に見かけた獣もいた。

鎖に繋がれながら、身体を発火させ暴れている。

その発火のたびに人々は歓声を上げ、まるで無意味な抵抗を見て楽しんでいるかのように…


「今回はまた、珍しい獣を捕まえているね。確か名前は…」

「ホムラマトイ・ライノス…」

「そうそれだ、知ってるのかい?」

「あの子たちは…どこに連れて行かれるんですか?」

「城さ。王様に献上されて、その後は城内で飼育されるとかってフォルテも言っていたよ。」


「……。」


いきなり知らない場所に連れて来られて…相当負担がかかっているはず…

あの檻の獣たちの目に光を感じなかった。それに妙に身体が小さく見える。

あの時見たホムラマトイ・ライノスはもっと大きく堂々としていた。


「もしかして…あの檻にいる子たちはまだ幼体…?」

「いや、あれはマテリアの魔法で…」


突然、一際大きな歓声が沸き上がった。


最後の檻が城門を超えたようで、群勢の視線はその檻に向けられている。


「今回は相当な収穫じゃないか」

「あれは…」


辺りに白い羽が舞い、鋭い爪とその大きな翼を羽ばたかせようとして檻が軋む音が響き渡っている。


本で見たこと事があった。この世界における希少種の一種…



「グリフォン……」



四足でありながら鳥の頭を持ったその姿。なんて神々しいのだろうか…


だがこんな形で見ることになってしまうなんて…


「マテリアが遠征するようになってから珍しい獣を見る機会が増えたね」


「どういう意味ですか…?」



「マテリアは質量を自在に変える事ができる魔法『プロティアル』の使い手なのさ。それで獣を縮小させて捕えやすくしているって話だよ。」


「縮小…じゃああの身体が小さいのは魔法で……」


その時だった。


突然、王都上空から甲高い鳴き声が降り注いだ。



衛兵の一人が上空を指差し、声を荒らげる。




「グリフォンだっ!!!!」



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