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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第三章 王都アライア・へウン編
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第31話 「潜入」

日が沈み辺りが暗闇に包まれる中、城壁内からはうっすらと灯りがこぼれていた。


「あそこに降りよう!」


上空から見えた広場目掛けて急降下し、決して人に見られないよう、音を立てないように風を切る。


広場に着地すると急いでラズリから降り、辺りを見回す。


「行ってラズリ、あの小屋で待ってて…!」


そう告げると、ラズリは少し寂しげに私を見ながら飛翔していった。


「必ず戻るから...」


今のところ、作戦通りだ。


足音を立てないように物陰に隠れ、もう一度辺りを見渡した。


夜もあってか、松明の灯りだけで人の姿は見当たらない。ラズリも見られてはいないだろう。


潜入はひとまず成功したといったところか。


それにしても...


「すごい...」


初めて見る大きさの建物。広場からいくつも伸びている迷路のような道。

どの道先も同じような光景で、どこに行けばいいかわからなくなってしまう。


このアラシア大陸最大の王都だ。私のいた村と比べ物になるわけがない。


ひしひしと痛感してしまった。


だが、別にここへは観光に来たわけではない。

今も母はどこかで幽閉され、どんな目に遭わされているか...


それに村長はあと半月もしないうちに母は封印を始めると言っていた。


残された時間も少ないはず…


「よし、行こう...」


フードを被り直し、姿が見られないよう慎重にその迷路へと進んでいった。





とは言ったものの...


正直、宛もなくこの広大な王都内を無闇に歩いて母を見つけられるのだろうか...


歩みを進めても見えてくるのは同じ街並みに同じ松明の灯り...


段々と道幅も狭くなり、まるで迷い込んだ異物を圧し殺そうと重圧をかけてくるようだ。


その重圧に負けぬよう、なんとか踏ん張りながら進んでいると、突然景色が変わった。


「わぁ…」


崖上に伸びる街道からその下に広がる街並みが一望できた。


暗がりの中に灯りが溢れ、圧し殺されそうだった心を和らげてくれる。


ここだけ見れば、とても美しい光景だった。


でも、きっとこの灯りの中に母がいる。


母が起こそうとしている反逆の罪がどういう物かは分からない。




そんなの…知ったことじゃない。




あの優しい母が理由もなくそんなことするはずはないから。



「あれぇ?こんなところで何してるのかなぁ?」


太い声が背後から聞こえ、振り返ると2人組の男が立っていた。


「こんなところに女一人でいるなんてよぉ、そういうことだよなぁ」


ジロジロと確かめるように視線を向けられ、少し恐怖を感じる。


早くここを離れないと…


フードを深く被り直し、無言でその場を離れようとする。


「ちょっとちょっとぉ、どこ行くんだよ」


男達は立ち塞がり、さらに詰め寄ってきた。


「すみません...通してください...」

「顔も悪くない、連れてくぞ」


急に腕を掴まれ強引に引っ張られる。


「ちょっと…やめてください!」


振りほどこうにもその力の強さに逃げることも出来ず、ナイフを取り出すことも出来なかった。


怖い…誰か助けて…


恐怖から声を出すことも出来ず、薄暗い路地裏に連れ込まれそうになる。

美しかった景色から遠ざけられ、暗い闇が近付いてくる。


「誰か…ッ!」


路地裏に連れ込まれ、衣服を強引に脱がされそうになったその時だった。


「見つけたぞっ!」


声のした方に視線を向けると、甲冑を身に纏った大柄な男が立っていた。


「なっ?!『無双のフォルテ』っ?!」

「まずい逃げろっ!!」


その姿を見た2人組は私からすぐに離れ、路地裏奥に逃げ走っていった。


「人攫いで指名手配中の2人組だ!捕らえろっ!!」


その男が号令をあげると、背後からさらに甲冑を着た衛兵が数人、2人組のあとを追いかけていく。


何が起こったのか分からなかったが、一気に緊張と恐怖から解放され、その場に崩れ落ちてしまった。


「大丈夫か?」


その男は私に手を差し伸べてくれるも、手に取る事が出来ない。


「すまない。見つけるのが遅れてしまって。」

「い、いえ…」


男は顔を覗くように身を掲げてきた。


「ん?君は、あまり見かけない顔だが…」


乱れたローブとフードを着直し、顔を合わせないようにした。


「綺麗な青い瞳をしているな」

「……っ。」


助けてもらっておきながら、とても失礼な態度をしていることは分かっている。


「まさか…な。」


ボソッと何か呟いたようだが、私には聞こえてはこなかった。


「あ、ありがとうございました…」


その場から離れようと、男の隣を通り過ぎようとした時。


「待て。君はどこの家の住人だ?地区は?」

「えっと...」


完全に怪しまれている様子だ。

それもそうだろう。こんなローブを着た見知らぬ人物がいれば当然。


「俺と一緒に来るんだ」


私は抵抗する気力もなく、その男の威厳ある背中に付いていった。


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