第27話 「陰謀」
「エレイアは今、禁じられた一族の力を解き放ち、この大陸全土を自らの命と引き換えに封印しようとしておる。この大陸の中心に位置する王都でな」
「封印…?どうしてそんなこと…」
「フェリス、おまえが器にならなければ五神獣の封印が解かれ、この大陸は滅びゆく運命にあるのだ」
「じゃあ、私がその器になればお母さんは助かるの…?」
「…そうじゃな」
「だったら…私はその器になる!お母さんを助けることができるならなんでもする!」
「ならおまえは、母の覚悟を無駄にするというのか?」
「え…?」
「おまえを助けるために、この大陸を天秤にかけても我が子の命を守ると決めたのだぞ。その覚悟を無駄にするつもりか?」
「…それでも、お母さんを置いて逃げるなんて…できない…できるわけない…!」
今までの思い出が走馬灯のように蘇ってくる。
楽しかった時、辛かった時、いつも母は隣にいてくれた。
温かい朝ご飯を用意してくれて、獣と共に生きる術を教えてくれて…
「お母さんを見捨てるなんて…」
「……この大陸を脱出するためにはそのドラゴンの力が必要だ。」
「大事な話のところすまないが、俺達と一緒に海路で脱出するのはダメなのか?」
黙って話を聞いていたライトが口を開いた。
「そしたら検問で引っかかって王都へ連れて行かれてしまうだろう」
「確かに…兄貴の言う通りだな…」
「余計なこと言わないでよバカライト」
「ぐっ…俺は良かれと思って…!」
「そのドラゴンに乗れば、見つかることなくこの大陸を脱出することができるはずじゃ。怪我が回復するまで、村にいるのだぞ」
「お母さん…」
こうしている間も、お母さんは…
「三人も、この大陸を出たほうがいい。あと半月もしない内にこの大陸は氷で覆われ、全ての命が封印されてしまう」
「まじかよ…」
「じゃが、もう1つだけ依頼を増やして良いだろうか?」
なにやら村長が三人と話しているが、何も聞こえない。
横たわるラズリを見ながら、私はただ泣くことしかできなかった。
ーーアラシア大陸中央平原 王都アライア・へウンにてーー
「申し訳ありません。ドラゴンの捕獲は失敗に終わりました。」
王都内の上層地区に位置する教会の祭壇前。
燭台に灯された少しの明かりの中で、二人の人影が話をしていた。
決して、誰にも聞かれることのないように…
「ほぉ…わざわざお前を向かわせたにもかかわらず、あの娘もドラゴンも連れて来ることができなかったわけか…とんだ時間の無駄であったな」
「申し訳ありません…この大陸に登録されていない冒険者の邪魔が入りまして…恐らくセレニス大陸から来た奴らかと…」
「言い訳は聞いてはおらぬ。幻影のアウルよ。私はひどく失望しておるのだぞ」
「もう一度、私めにドラゴン捕獲の…うぐっ…?!」
突然、アウルは胸元を抑えその場に蹲る。
その姿をまるで楽しんでいるかのように、教皇は冷徹に魔法陣を展開しながら眺めていた。
「どうしたのだ、アウル?」
「ぐぐっ…教皇様…お許しを……!」
「何を許すというのだね?」
「ぐふっ…うっ……!!
「もう一度、お前に命令しよう。ここにそのドラゴンを連れて来るのだ。この王都の兵力向上のためにも。」
教皇はその暗く濁った目を向けながら魔法陣を閉じる。
「はぁ…はぁ……か、必ずやご期待に…」
「あの女の術の解放も近い。それまでに器に封じ込め、兵器化計画を進めねば…」
よろよろと、今にも倒れそうになりながら教会を後にすると、不気味な笑い声が教会に響き渡った。




