第25話 「依頼主」
「ライトさん…どうしてここに…」
剣を肩に乗せ余裕を見せているが・。決してその視線は逸らしていない。
「フェリスー!」
背後から二人の人影が駆け寄ってきた。
「良かった!無事で!」
「アスカ…どうしてここに…」
「話は後だ。今は目の前に集中する」
「グロウノーツさんまで…」
「二人ともやっと来たのか!」
「あんたが急に突っ走るからでしょうが!」
「相変わらず、無鉄砲にも程がある」
「まぁまぁ!三人揃ったところで、やりますか!」
三人がそれぞれ武器を構え、戦闘態勢をとった。
「行くぞ!!」
ライトが一目散に飛び出し、斬りかかる。
「愚かな…そんな攻撃で私を倒せるとでも?」
ライトの放つ剣撃をのらりくらりとかわし、腹部目掛けて魔法陣を展開している。
だがその瞬間、魔法陣がボロボロと崩れていった。
「む、これは…」
「だから無闇に突っ込むなと言っているだろう」
グロウノーツが杖を構え、魔法陣を展開していた。
「解除魔法か、姑息な真似を…アンパクト〈衝撃波〉ッ!」
母の姿をした者は標的をグロウノーツに変えて魔法を放つ。
「アンパクト〈衝撃波〉っ!」
だが、すぐに魔法陣を展開し直して衝撃波をぶつけて相殺した。
「同等威力により相殺されたか…」
「よそ見してる暇あんのかおらぁっ!」
立て続けにライトが斬りかかるも、魔法陣を盾にしながら攻撃を受け流していく。
「さっきから単純な攻撃ばかり…当たるわけがない」
「そりゃそうだろうな…アスカッ!!」
「わかってる、ブリッツ・アロー〈閃光の一矢〉ッ!」
潜伏していたアスカが姿を現して、光を纏った矢を打ち放った。
「ぐっ…!」
見事に矢が突き刺さり、怯ませることに成功している。
「ふん、小癪な…」
肩に刺さった矢を引き抜きその場に投げ捨てているが、その箇所から出血はしていない。
「俺が陽動して二人が遠距離攻撃、これが俺達の戦い方だ。」
初めて見る戦闘…
これが村の外にいた人達…
冒険者なんだ。
「すごい…」
「そうか、貴様らだったか。コソコソと探り回っていたのは…」
「まさかこんな綺麗な女性に化けているとは…けしからんやつめ」
「ふん…この姿は王都で捕縛した女を模倣しているだけだ」
「え…?捕縛ってどういうこと…?」
「フェリス、あいつの正体は“幻影のアウル”っていう幻影魔法の使い手よ。その名の通り、他人からその姿と記憶を模倣して魔法で実体のある幻影を作り出して身に纏っているの。」
「じゃあ、あの人はお母さんの姿を纏っているってこと…?」
「そうか、あんたの母親だったのか。なら辻褄が合う。」
「フェリスちゃん、あいつはフェリスちゃんのお母さんに化けてそのラズリってドラゴンを捕らえにきた野郎だ。俺達はそれを阻止しにギルドから任務を受けてここに来たってわけさ。」
「ギルド…任務…?」
三人が話していることの意味が理解できなかった。
でも、分かったのはラズリが狙われていることと、母が捕まっているということ…
「ここは一度引くか…」
そういうと、幻影のアウルは影で姿を消し、その場から消えた。
「あっ!逃げやがった!」
「落ち着けライト、深追いはするな」
「そうよ、またはぐれるだけなんだから」
辺りは静寂に包まれ、風の吹く音だけが聞こえる。この一瞬の間で、全てを理解することはできなかった。
ただ、もう一度ラズリに触れて力を込め、治療を始めた。
「ラズリ…お願い目を覚まして…」
ただ、ラズリを助けたい。
その想いを強く願う。
すると、先程は途中で力の抜けた淡い光が、今度は強く感じることができた。
ラズリの受けた重傷がみるみる内に塞がっていく。
「フェリス、何をしてるの?」
アスカが何か尋ねてきているが、集中を切らすことはしなかった。
「治癒魔法か?」
「いや、それにしては治りが早すぎる…これは一体…」
三人も私のこの力をまるで初めて見たかのような反応だった。
気づけば、ラズリの傷は塞がり、跡形もなく消え去っていた。
ゆっくりとその目を開き、私を見つめている。
「良かった…」
優しく抱き締め、その体温を直に感じると安堵した。
「私を守ってくれたんだね…ありがとう…」
「フェリスちゃん、本当にドラゴンと心を通わしているんだな…」
剣を鞘に納めながら、ライトは驚いた表情を見せている。
「正直、依頼主に話を聞いたときは信用していなかったが…」
「その依頼主って…任務って誰から受けたんですか?」
「任務はこの村の…」
「わしじゃ」
突然声が聞こえ、振り返るとそこには…
「村長…!」
思わず、私はラズリを背に隠した。




