第23話 「おかえり」
「お母さん?!帰ってきてたの?!」
久しぶりに見た母の姿。
少しやつれているようにも感じるが、それでも私の憧れで、大好きな母がそこにいた。
「おかえり、フェリス……あらっ…」
1ヶ月ぶりの再会だった。
見慣れていたはずの瑠璃色の髪と瞳、片耳には私と同じ瑠璃色の耳飾り。
思わず、抱きついてしまった。
「ごめんね、ずっと留守にしてしまって」
「ううん、大丈夫だよ。おかえりお母さん…」
「ただいま、フェリス」
母の香りだ。
暖かく、懐かしく、まるで優しさに包まれたかのように落ち着く。
「あのドラゴンは大丈夫だった?」
一瞬で胸に緊張が走った。
「え、ドラゴン……?」
「そう、世話を貴方に一任してしまっていたけれど、問題は無かったかしら?」
「あ、あぁ~、うん、大丈夫だったよ?」
ラズリの事ではなかった…
てっきりバレてしまったのかと、身体から冷や汗が出たのを感じてしまった。
「お母さんに言われた通りの事は続けた。あとはその時の状況で…」
母のいない間に起きたことを止めることなく話した。
久しぶりの母との時間をしっかりと噛み締めながら。
もちろん、ラズリの事は伏せてだけど。
「しっかり世話が出来ているみたいね」
母の笑顔も1ヶ月ぶりに見た。
「ドラゴンって、最初はちょっと怖かったけど一緒にいる時間の中で色んな事が分かって、私達と同じ命だったんだなぁって…」
これは、多分ラズリと過ごした時間の中で気付いた事だと思う。
「そう、良かった」
母は優しく私の頭を撫でてくれた。
前までは嬉しかったけど、今は恥ずかしさを感じる。
「お母さん、私もう15だからそういうのは…」
「あら、さっきは抱きついてきたのに?」
「そ、それは…!」
「ふふっ…いつまでも貴方は私の愛する娘だからね。」
そう言うと、また母は頭を撫でてきた。
「もう…///」
「じゃあお母さんもお風呂行ってくるから。留守番お願いね」
「うん、いってらっしゃい!」
身仕度を終えた母を見送ると、また部屋に1人になった。
「お母さんの分も準備しておこうっと」
明日着るであろう衣服等の準備を終え、母の帰宅を待つ。
いや、ついさっき出たばっかだ。
それでも母に話したいこと、聞きたいことが山ほどある。
早く帰ってこないかなと、温めたケガワウシのミルクを片手に窓の雪降る夜空を眺めていた。
「ん………あれ…?」
気付けば、私はいつも寝ているベッドから身体を起こした。
確か椅子に座って待っていたはずじゃ…
窓の外を見ると朝日が昇り、陽光が雪を反射させていた。
「うそ…寝ちゃった…?」
部屋には朝食の香りが微かに広がっている。
急いで起きて、香りの元へ向かうと母が魔法で火を起こし朝食を作っている最中だった。
「おはようフェリス、良く寝てたわね」
「もう!昨日帰ってきたら起こしてよ!」
「ごめんね、あまりに気持ち良さそうに寝ていたから(笑)」
クスッと微笑む母の表情。机に並んでいく朝食。
あぁ…懐かしい…
「いただきます。」
「あ、いただきます!」
温かい母の作った朝食だ。
ケガワウシのミルクを使ったシチューに小麦から作った少し硬めの質素なパン。
これを浸して柔らかくしてから食べるとたまらなくおいしい。
「うまし~い!」
「フェリス、言葉遣い。」
「あ…美味しい!」
我ながら母の前では子どもだと感じる。
今では代わりに厩舎を仕切って仕事をこなしていたが、母にはどこかかなわないとそう思う。
「フェリス」
「なに?」
「いつから、あのドラゴンに乗ってるの?」




