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幸福のフェリス  作者: 海野 咲凛木
第二章 プロト村 青年編
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第21話 「初めて」


アスカと仲良くなれた次の日。


久しぶりに仕事が休みということもあり、朝からラズリの元へ向かっていた。


昨日、アスカから聞いた話がずっと気になっていて、そこに行ってみたい。


「おはよう、ラズリ」

キュルルッ!

「今日はね、行ってみたいところがあるの」

そう言うと、ラズリは不思議そうな顔でこちらを見つめてきた。

村の掟では、15になれば村からの外出は許可されている。

もちろん外の世界に興味はあるが、どちらかと言うとラズリとこの世界を翔んでみたいという気持ちの方が強い。


「海、見に行ってみよっか」







ここから海への道はアスカに教えてもらった。

朝方、太陽を背にして真っ直ぐ進む。麗峰を越えてもひたすら真っ直ぐと。


しばらくすると、青い水の海が見えてくるとか。


徒歩だと2日はかかるらしいが、ラズリと行けば半日もかからないだろう。


「よし、行こう!」

私は期待と少しの不安を胸にラズリに跨がり、雪の降り積もる麗峰を翔び立った。


麗峰の中間層辺りまでで高度を保ちながら、水平飛行をしていく。


雪が覆う山間部は、朝日の陽光に反射するように照らされていた。


ラズリは平然と空気を切り裂きながら、飛行を続けてくれている。もう重心を意識して変えなくても上手く翔んでくれていた。


「どうしよう…私、緊張してる…」


初めて見る外の世界。

引き返そうかと悩んでいたが、ラズリは止まろうとはしない。

麗峰を抜け、雪が次第に溶けて地面の色が露になってきている。真っ白な銀世界で生きてきたこの視界に、知らなかった色が広がっていく。


「わぁ…緑色の平原だ…」


雪が完全にとけ、草木が生い茂る平原が見えてきた。

「あれって…ラズリ、ちょっと高度下げて」

平原に何か動いているものが見えたような気がした。

徐々に近づいていくと、それは…


「もしかして、ヘイゲンウマ?!」

ケガワウシに比べてすらっとした体型だが、筋肉質な身体の四肢の獣だ。図鑑の中でしか見たことのなかった獣が今、目の前を闊歩している

「わっ!?あれってホムラマトイ・ライノス?!」

名前が長くて特徴的な個性を持っていたから良く覚えている。

普段は大人しいが、攻撃を受けると汗を発火させて突っ込んでくるという。


「すごいすごい!あそこにも!」


気付けば、村を飛び立った時に持っていた不安と緊張は忘れ、自然に生きる獣を見つけるのに夢中になってしまっていた。


そして、それは突然だった。


「あそこにいるのは…ってあれ?」


突然緑の平原が消え、小麦色の砂地が広がり始めた。

不思議に思って、ラズリに着地させて私も一緒にその砂地に降り立つ。


「これ全部…砂?」


喉を鳴らし、足踏みしてその沈む感触を楽しんでいるラズリを他所に辺りを見渡す。



「あ……」


どこまでも広がる青い色。その青は砂地を覆うように行っては戻ってを繰り返していた。


アスカの言っていたことと一致している。



これが、海なんだ。


恐る恐る近付き、その海が砕ける音を聞く。

とても心地が良い。

気持ちが落ち着くというか、自然と穏やかにさせてくれる。


後ろでラズリが寝転がり砂浴びをしていたが、私は目の前に美しい景色に釘付けだった。


初めて見た外の世界。初めて見た一面美しい青の海。


暑い…気温も高くなっているのか、着ていた厚手の上着を脱ぎ薄着になるが、それでもまだ暑い…


そういえば塩水って言っていたっけ?

少し、指に付け舐めてみると…


「しょっぱ…!?」


本当に塩水だ。

というか、この視界に広がっている水が全部ってこと…?


もう圧倒されてばかりだ。

雪に覆われた村しか知らなかったのに、外はこんなにも美しい世界が広がっていたんだ…


「イリアンにも飲ませてみようかな(笑)」


持参してきた革の水筒の水を飲み干し、海の水を汲む。

彼の反応を見るのが楽しみだ。


「あれ、ラズリ?」

振り返ると、そこにラズリの姿が見えなかった。

「ラズリー?」


辺りを見渡すがどこにもいない。

「どこ行っちゃったんだろ…ん?」


少し遠く離れた水面下に何か黒い影が見える。


「まさか…」


ザッパーーーーーンッ!!!


勢い良く、ラズリが水面下から飛び出してきた。

「うわっ!?冷たっ!?」


ラズリが嬉しそうに海の水を潜って飛び出してを繰り返して遊んでいる。

「ちょっとラズリ?!」


砂浴びの次は水浴び…

なんかついでに捕まえたというように魚も咥えているし…


楽しそうなラズリを見ていたら、少しうずうずしてきた。


「私も…」


替えの服なんか持ってきていないし、帰りの事なんか考えもしなかった。



私は衝動に身を任せ、この美しい青い水に飛び込んだ。


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