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188 ハツラツ挨拶

 こんにちは。


 私もあんまり詳しくはないのだけれど、例のバイト君は就職先が決まったらしい。

 それは本当に良かった。

 今は学生のほうが売り手市場なのは、本当にことなんでしょうね。いくつか内定をもらっていて、選んでるい状態なのか、もう一社に決めたのかは知らないのだけれど。


 うちの従業員には、震災で決まっていた就職が無くなった人もいるし、超氷河期でのちの救済すらない世代もいて……まぁ、タイミングの問題ですね。

 それで妬んだりはしないですけどね、それでも何かを察知しているからなのか、彼が頻繁に、就職が決まった話や、決まったから発生する幸せな厄介ごと話をするのは店長にだけ。

 本当にしょっちゅうしている。まぁ嬉しいんだろうから仕方がない。


 でも店長は店長で、彼が本当に社会に出て、数年後に同期には出世や責任ある役職が決まって行く中、一人だけ平社員で、取り残されないかを本気で心配している様で。それが取り越し苦労ではないだろうと言う事は、私でも分かるんですよね……

 今日も、今まで店長やお客さんにしてきた、上っ面の勘違い正義感から出た、舐め腐った態度と正論を、突きつけられて、お説教を受けていた。


 店長に向かって「あなたは社員ですよね?なのに、なぜやらないんですか?」と言ったこともあるらしい。怖いなぁ……。その時点で、使いたくない子だと切り捨てられる可能性は十分にある。学生のアルバイトだからと、店長も根気よく寛容に付き合ってくれているけれど。

 彼はうちの店で二年以上のキャリアになるそうだけれど、去年末に入って来た主婦パートさんに、出来る仕事の種類も量も質も、全部抜かされている。


 彼は、自分の危機察知能力を自己満足させる為だけに、石橋をたたきすぎて、橋を渡りたいと待っていた人たちをイライラさせた挙句に、不器用である事を理解しないで、やたら目ったら闇雲に橋を叩くものだから、最終的に橋を落としてしまうタイプの行動パターンなのです。でも、それは自分のせいではないと、自信を持っている。プライドが高いんですよねぇ。

 なので、不器用であると言う事を認めた上で、落ち着いて丁寧にしたら出来る事も、ササッとできるはずだと過信するので、ちょっとした工作物も10倍以上の時間をかけても、商品に出来る仕上がりにならない事が多々ある。


 先日も、たとえ話になりますが、これに近いことがありました。

 アイスクリームを買ったお客さんが、アイスを食べるスプーンも付けて欲しいというので、私がスプーンを一緒に渡そうとすると、私が対応していたのに、急に横から、柔らかい白樺の木で出来たスプーンにささくれで怪我をしないだろうかと言いだして、スプーンを梱包してある紙から出そうとする……みたいな感じです。

 サービスが過剰すぎるのと、石橋を叩きすぎるのと。もうスプーンを渡した後は、お客さんが解決する問題です。というか、滅多に起こらない事を世界滅亡の一大事だ、出来ない人は人間では無い、くらいの大事のような空気感を作り出すのです。


 店長が、そんな彼にもこれくらいはして欲しいなぁと思って、どんなに忙しい日でも、絶対に手持無沙汰になる時間はあるから、その時間にボーっとするんじゃなくて、カウンターなどを水拭きしてほしいと再三言っているそうなのだけど、その時に彼は「アルコールで拭いた方が綺麗になります」というだけで、一度も拭いたことが無いらしい。

 私も水拭きをした方がいいと思うんだけれどね……。菌の汚れじゃなくて、砂埃とか手あかの汚れだから。水拭きをした後にアルコールならまだ分かる。

 今日も「拭いている所を見たことが無い」というと「いや、それはアルコールの方が綺麗になるから……」といっていたけれど、「じゃぁ、アルコールで拭いてるのか?」と聞かれて詰んでいた。

 百歩譲って、アルコールの方が良かったにしても、やっていないのなら問題外。

 

 これって、全部まずは自分を客観的に知る事と、相手はどんな思いや意図があるのか考える事。

 基本的に彼は、出勤時はいつも機嫌が悪そうで、疲れてそうで、不愛想に雰囲気で出勤してくる。

 もうそれだけで、新入社員がそれをしたらアウトだろうなぁと思う。コミュニケーションって本当に大切だから。もしも体調が悪くたって、一緒に働いている人にも、お客さんにも関係が無い事だ。

 体調はある程度考慮されるべきだけれど、しんどいアピールをされても困るのだ。機嫌が悪いだけならなおさら。気を使って欲しい子、かまって欲しがりの邪魔くさい子にしかならない。自分の機嫌は自分で取るのは、当たり前の話。

 しんどいアピールや、機嫌が悪いアピールをしたいなら、前もってそれが出来る関係を築いておく必要がある。それに、働けないくらい体調が悪いなら休んでくれて構わない。それくらいで、いじわるをする職場では全くない。逆にそういう、心配してくれる優しい人ばかりの職場だから、ずっと甘えているのだ。


 私も意見を求められたので、いつも負の感情や、失敗した状況ばかりを口にして、ネガティブな空気感を作るので、明るくいる事、楽しんだもの勝ちだと言う事、元気でいる事。最低限、出勤した時はハツラツと「おはようございます」という事だと言った。本当にこれだけで、世界が変わるのよ。自分が変われば、周りが変わって環境が変わるよ、と話した。

 あとは自分を知る事。なかなかこれは難しいから、自分の考え方の癖を知るのに、少しでもとっかかりになるかもしれないなぁと、マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標を伝えておいたけれど、やる気はないみたいだ。……そういう所なんだけどなぁ。


 人から与えられた情報は、受け付けないんだろう。雑談をしていても、いつも私のちょっとした会話に違う情報被せて来て、マウントを取ろうとするし……。そういう全部、みんなが優しいから許してくれているんだけどなぁ……。指摘されたら余計に拗ねるだろうから、自分自身で気が付かないといけない試練なのでしょう。

 

 自分を知ると言う事は、人を知る事でもある。自分を知ると、不得意な事に対して、前もって対策が出来る。生きやすくするためのコツなんだけどなぁ。

 自分を知るのは、自分を決めつける事じゃなくて、可能性を広げる事なのです。


 彼が新入社員になるまでに、ハツラツ挨拶が出来るようになるだろうか。まずはそこからだ。


 

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