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勘違いしそうですけどね

――それにしても、どこかで見たような顔だったな…。


聞き上手な人だったからついペラペラと喋ってしまったけど、どこで会ったかしら? と彼女が考えていると、空の穴から降りてきた彼がこちらに向かって飛んできた。


…ったく毎度毎度、こっちに降りてこないでサッサと帰ればいいものを…。


「連絡ありがとうございました。今回も一応聞きますが、戻りませんか?」 


「今回もお疲れ様でした」 


私はニッコリ笑顔で追い返す。それを見て彼はため息を吐いた。

これが毎回のやりとりで、彼が先ほど話した港の責任者です。


「では、また何かあったら宜しくお願いします」 


「は~い、お気をつけて~」


私は空に向って飛んで行く彼に手を振った。彼が穴に入ると空はパチッと閉じて元の青空に戻り、島はいつも通りの静けさに戻った。私はまた縁側でのんびりと眠りにつく。あ~疲れた(気分だけね)。



――ところで、何度も言いますが、ここは本当に真っ暗闇だったんですよ。



最初は私も慌てました。光も無い、上下もわからない真っ暗な空間で、『わぁ~どうしよう?!』って一人で大騒ぎしました。実際はそんな可愛らしいもんじゃなくて、後で恥ずかしくなるくらい取り乱しましたが…。


でも途中から気がついたんですよ、自分が死んでるんだってことに。なんだ、それなら慌てることもないかって思いましてね。


どこかへ行くはずだったけど別にソコへ行きたかったわけでもないし。だから考えても仕方がないので寝ることにしました。


ただ、どうせ寝るんなら青空の下、解放的な瓦屋根の平屋で畳敷き縁側付き、綺麗な海の見える白い砂浜があって、行くはずだった旅行先の南国のような環境ならいいんだけどな~、とか思いながらね。まあ思っても普通はそうならないもんです。


でもね、眠りから覚めると妙に明るいんですよ。あれ? ここどこだっけ? って混乱しました。だって起きたら景色が全然違うんですよ?!


青い空と海、白い砂浜、考えていた通りの平屋。それと、同じ場所に生えそうにない、チグハグな熱帯植物たち。全て自分が寝る前に思っていた通りの景色。


夢なんだと思ってもう一回寝ようとしましたが…、流石にもう眠れませんでした。


仕方ないので確認しましたよ。砂や植物の感触とか建物が本物かどうかをね。不思議なんですが、ちゃんと触れるんですよ。私、死んでるから実体無いはずなんですけどね。


せっかくなんで使わせてもらうことにしました。

これが私の優雅なバカンスの始まりです。


時間も何も関係なく、景色を見てのんびりして寝るだけ。老化もしない、病気もしない、食欲もない、疲れもしない。


すっごく快適! 居心地がいい!! 


服も着てるけど洗わなくていいし、いつの間にか眼鏡は無くても見えているし、天国ってここじゃないですか? ってね。


そうして好きな時に寝て起きてボーっとしてを繰り返していたら、ある日突然、その静寂を破る人(?)が現れました。縁側からのんびり空を眺めていたんですが、一部が急にプクッと餅焼くように膨れてパチッと弾けて空に穴が開いたんですよ。


え? 空って穴開くの?! って驚きましたね。そこから誰かが降りてきたのにもビックリしました。向こうも驚いていましたが、こっちもそれ以上に驚きましたよ。


だってその人、浮いてるんだもん! 


彼、最初は辺りを見て固まっていたんですが、島にいる私を見つけた途端、こちらに向って飛んできたんです。映画の中の超人のようにマントは無かったけどね。

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