コント「ももいろクローZ」
●登場人物
美佐子
まゆ
陽子
(全員二十一 高校時代からの友達)
男(美佐子の彼氏)
○美佐子の部屋 玄関 ※以下、全て美佐子の部屋にて。
玄関の前。まゆが玄関のベルを鳴らす。
反応がないので、もう一度、鳴らす。
再び反応がない。
が、何度目かのベルの後、やっとドアが開く。
美佐子「まゆ……?」
ドアチェーンは掛けたまま。
まゆ「ごめんね。久し振りに美佐子の顔を見たくなっちゃった。ん?」
美佐子の手が濡れている。
美佐子「(一瞬、戸惑ったような表情をしてから)ちょっと掃除してたの。さ、入って」
ドアチェーンを外して、まゆを招き入れる。
○リビング
美佐子「楽にして」
そう言ってキッチンに入る。
○キッチン
美佐子が紅茶の準備をしている。
○リビング
美佐子がトレーに紅茶を載せて入って来る。
が、まゆがいない。
美佐子「まゆ?」
そのとき美佐子の携帯が鳴る。
トレーを置いて携帯に出る。
携帯、陽子「(慌てた声で)あ! 美佐子!」
美佐子「陽子? どうしたの?」
携帯、陽子「き、聞いた?」
美佐子「何?」
携帯、陽子「まゆが……まゆが死んだの……」
美佐子「え?」
携帯、陽子「一時間前、大学の研究室で実験しているとき、爆発事故が起きて──まゆが、まゆが死んじゃった……。美佐子はまゆと仲がよかったから早く知らせておこうと思って……」
美佐子「わ、分かった……」
携帯、陽子「じゃあ切るね……」
美佐子「あ、ありがとう……」
携帯を切って床に崩れ落ちる。
美佐子「まゆ……。最後に会いに来てくれたのね……」
泣く。
○クローゼットの中
クローゼットの中に、まゆが隠れている。ドアを薄く開けて美佐子を覗き見ている。
まゆのM「わたしのために泣いてくれるのね……。ごめんね。今、出て行くからね。あ!」
そのとき、まゆに何かがもたれ掛かる。
まゆ「何?」
それは若い男だった。まゆ、悲鳴を上げながらクローゼットの外に飛び出す。
○リビング
クローゼットの中から飛び出して来た、まゆを見て、
美佐子「まゆ……」
まゆ「(腰を抜かしている)な、中に人が──」
クローゼットを指差す。
美佐子「まゆ……。どういうこと……? 死んだんじゃなかったの……?」
まゆ「(ヒステリックに)ごめんなさい! 陽子と組んでイタズラしたの!」
クローゼットの中の男が倒れ出て来る。
胸に刺し傷がある。一見して死んでいることが分かる。
まゆ「キャー!」
美佐子「……」
まゆ「し、死んでる! どうして? どうして?」
美佐子「(突然、笑い出す)ふふふふ。あははは。だって他の女と付き合うから別れろって、料理していたわたしに向かって平気な顔で言うんだもの」
そう言うと、立ち上がってキッチンに向かう。
まゆ「美佐子?」
美佐子、包丁を持って戻って来る。
まゆ「美佐子?」
美佐子「まゆ……ごめんね……」
まゆに向かって包丁を振り上げる。
まゆ「美佐子! やめてー!」
包丁を刺した音「グサッ!」
暗転。
○リビング
放心状態の美佐子がいる。
二人の死体が消えている。が、カーペットには、まゆの血の痕が。
そのとき美佐子の携帯が鳴る。
美佐子「はい」
携帯、陽子「あ、美佐子? ごめん。怖かった?」
美佐子「──え? 何が……?」
携帯、陽子「ひょっとして怒ってる? まゆと代わって」
美佐子「え? だってまゆは死んだんでしょ」
携帯、陽子「それはもういいの! 来てないはずないじゃない。携帯で連絡を取り合って、まゆとタイミングを合わせたのよ」
クローゼットの中から、まゆの死体が倒れ出て来る。
携帯、陽子「(音を聞いて)あー。今の音」
美佐子「(否定する)ううん。違うよ。まゆじゃないよ」
今度は男の死体が倒れ出て来る。
携帯、陽子「(再び、音を聞いて)ほらー! 早くまゆと代わりなよー!」
美佐子「ううん。今のは……今のは少なくともまゆじゃないよ……」
暗転。
了