修復できないものを壊してしまった
黒い人影が一心不乱に何かを壊している。
それは端から崩れながら徐々に形を歪めていく。
やがて白い人影が表れて、崩れたかけらを拾い集め、
それを修復し始めた。
それは元通りにはならなかったけれど、
歪に元の形を象った。
ふたつの人影の営みは繰り返されて、
段々とそれは壊れていった。
あるとき、黒い人影がそれを壊しているとき、
真ん中に他とは違う材質のものがあった。
黒い人影がそれを壊そうとしたとき、
初めて白い人影はそれをかばって、
壊させまいとした。
黒い人影はためらわず、それを壊した。
白い人影と黒い人影が背中合わせに座り込んでいる。
黒い人影はうなだれていて、白い人影はどこか遠くを見ている。
ふたりの真ん中にそれはあった。
それはばらばらに壊されて、かけらを繋いでどうにか形を保っていた。
それの真ん中には何もなかった。
そこには傷付いて、治らない、人の心があった。