表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の瞳は口ほどにものをいう  作者: 伊藤カナ
1/3

初め

 夕方という時間が私は嫌いだ。その日をどんなに楽しく過ごしても、必ず家に帰らなくてはいけないから。嫌いだ。


「アイノちゃん、また明日!」


 隣を歩いていた友人が、十字路に立って私に別れの挨拶を言う。彼女とはここから帰路が違うのだ。私には、今晩の夕食を楽しみにしている彼女に、まだ一緒にいたいと言う勇気がなかった。だからほら、私も手を振って元気よく答える。


「また明日っ!」


 何も知らない彼女は、今日も私の繕いにころっと騙されてセーラー服のプリーツスカートを楽しそうに翻し去っていく。

  その後、私はすぐに歩き出した。顔に貼り付けていた笑顔なんて道端にポイだ。まっすぐ家には帰らない。日が暮れきるギリギリまで公園で時間を潰すのだ。


  目的地は、住宅街のはずれの方にある小さな公園。今となっては閑散としたただの広場で、遊具ひとつない。私が小学生ぐらいまでは子供で溢れていたというのに、数年でこんな寂しい場所になってしまった。


  誰もいない公園の隅、私はいつも通り背の高い木の根元に腰を下ろした。公園の中でもここだけは芝生が生い茂っている。尖った芝生が素肌を刺激することを除けば、居心地のいい私の定位置なのだ。

  ここで何をするのか。特に。特に何かをするという訳では無いのだ。正面の山陰に沈んでいく大きな夕日をただ眺めるだけ。いつも通り、心では抱えきれない黒い感情を、沈む夕日と一緒に心の奥底に沈めていく。「今日も大丈夫」という自己暗示をかけるための時間。夕方に笑えなくなる私が、あの人に会う前に知り合いのいないところで一人になる時間が欲しいだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ