ドラゴンの生態
「これより、ドラゴンの生態調査に入る。 この録画は1000文字までしか記録出来ない為、速やかに撮影を開始する」
スマホの自撮り録画機能を使って説明を終えると、男はベッドから抜け出した。
扉を開け洗面台に向かい、スマホをガラスの脇に立て掛ける。
そして、置いてある歯ブラシを手に取る。
「ガシガシ、今回の撮影は、ガシガシ、ドラゴンの身投げ、ガシガシ、に迫る、ガシガシ。 ゴボゴボ、べっ。 失礼、今回の撮影はドラゴンの身投げの謎に迫る。 説明は準備をしながら行う」
蛇口の水を捻り、顔を洗う。
タオルでおおざっぱに顔の水滴を拭うと、シェービングクリームのスプレー缶を手にして、2,3回振った後に泡を取り出す。
それを顎に塗りつけ、ヒゲそりを右手に持つ。
顎の左側のヒゲから剃り始める。
「えー、今回の調査では、ドラゴンが何故身投げをするのか、その謎に迫っていきたいと思うが…… ああ、クソッ! 血が……」
慌てて近くのタオルで顎を拭う。
「こんな日にカミソリ負けしてしまうとは…… だか取り直しは出来ない。 とにかく、このままドラゴンの生息する竜の水飲み場まで向かおうと思う」
カミソリを投げ捨て、ドタドタと自室に戻る。
部屋の方で音がする。
……
ドタドタと音がする。
「スマホを取り忘れた。 一人で長々と説明してしまったが、重要な話のため、もう一度説明する。 が、それは移動しながらだ」
スマホを手にして、階段を降りる。
「ドラゴンが身投げするのには、今まで色々な理由が考えられてきた。 戦いに負けた竜が身投げする説、傷を負い、回復の見込みが無くなった竜が身投げする説。 しかし、私はそれ以外の理由を提唱する。 これから車でドラゴンの水飲み場へと向かうが…… クソッ、キーがないぞ! メアリー、車のキーを知らないか!?」
「は、車使うんだけど」
「ふざけるな! これから重要な調査をしなければならないんだ! キーをかせっ!」
「ふざけんなっ、このドラゴンオタクのくそ兄貴っ!」
無理やりメアリーの手のひらからキーを奪い、外へと向かう。
車にやって来ると、運転席に乗り込み、キーを差し込む。
そして、ギアをパーキングからドライブに入れて、発進させようとした時、前方に妹のメアリーが飛び出した。
「アイツ、ふざけてんのか!」
車から降りると、メアリーが声を荒げた。
「ふざけてんのはアンタでしょ! 私は一ヶ月前からこの車使うってママに言ってあったんだから!」
「お前と揉めてる暇は無いんだ! もう」